東京都の住宅市場、マンション高騰で戸建需要が増加 調査結果
東京都住宅市場、マンション高騰で戸建需要増加

マンションリサーチは6月5日、東京都住宅市場に関する調査結果を発表した。2024年1月から2026年3月までに公開された中古マンションの売出情報と、2023年1月から2026年3月までの中古マンション情報を収集し、統計処理を施して集計した。

東京都の戸建販売件数と平均面積

東京都の住宅市場では、近年、分譲マンション価格の高騰が大きな話題となっている。特に都心部や湾岸エリアでは、新築・中古を問わず価格上昇が続き、「東京のマンションはどこまで上がるのか」という議論が繰り返されてきた。そのため、住宅市場全体を語る際にもマンション市場ばかりに注目が集まりがちだ。

しかし、その一方で東京都の戸建住宅市場にも見逃せない変化が起きている。住宅購入者の行動変化を読み解く上では、マンションだけでなく戸建市場の動向にも目を向ける必要がある。こうした背景には、マンション価格の上昇による住宅取得行動の変化があると考えられる。

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マンション価格高騰で購入ハードル上昇

東京都心部では、この数年間でマンション価格が大きく上昇。特にファミリー層が求める70平方メートル以上の住戸や、3LDK以上の間取りについては価格上昇幅が大きく、多くの世帯にとって購入ハードルが高まっている。かつてであれば、子育て世帯がマンション購入を検討する際、都心部やその周辺エリアでも十分に選択肢があった。しかし現在では、同じエリアで広い住戸を取得しようとすると1億円近い価格帯となるケースも珍しくない。

住宅購入者は限られた予算の中で、「立地」「広さ」「価格」のバランスを取る必要がある。マンション価格が上昇した結果、これまでマンション購入を第一候補としていた層の一部が、より広い居住空間を確保できる戸建住宅へと選択肢を広げている可能性がある。

都内のマンションと戸建の価格差

直近1年間に売り出された住宅を比較すると、マンションの平均価格は約8,500万円、平均専有面積は59平方メートルとなっている。一方で戸建住宅は平均価格約7,000万円、平均延床面積105平方メートルだった。単純比較では、戸建住宅の方が約1,500万円安く、居住面積は約1.8倍広い計算になる。

マンションには駅近立地や管理体制、共用施設、資産性の高さといったメリットがある一方で、戸建住宅には広さや独立性、駐車場の確保、自由な住み方といった魅力がある。近年の価格差拡大によって、「マンションを購入する予定だったが、改めて戸建を検討した結果、戸建を選択した」というケースは今後さらに増えていく可能性がある。

戸建需要の増加は広範囲で発生

興味深いのは、この戸建需要の増加が特定エリアだけで起きている現象ではないという点だ。23区内および都下エリアごとの販売件数を確認すると、特定の区や市だけが突出して増加しているわけではなく、広範囲にわたって戸建販売数が増加している。もし再開発や人口流入など特定の要因によるものであれば、一部エリアに販売増加が集中するはず。しかし実際には東京都全体で同様の傾向が見られることから、住宅購入者全体の価値観や選択行動そのものが変化している可能性が高いと考えられる。これは単なる地域要因ではなく、「広さを求める実需層が戸建へ流れている」という東京都全体の住宅市場構造の変化として捉えることができるだろう。

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マンション市場の在庫動向

上の地図ではシンボリックなマンション(平均価格8,000万円以上)の在庫推移を表している。赤プロットは在庫減少傾向(流動性高い)、黄プロットは在庫一定(流動性普通)、青プロットは在庫増加傾向(流動性低い)を示す。都心部、特に山手線内側のエリアでは在庫が増加傾向にある。これらのエリアは実需だけでなく投資需要も混在するマーケットであり、近年の価格上昇局面では多くの投資マネーが流入してきた。

価格上昇による利益確定売却や、高値圏での売り出し増加によって市場供給は増えている。しかし価格が大きく上昇した結果、実需層の購入可能価格帯を超える物件も増加し、一部では流動性の低下が見られるようになっている。その一方で、山手線内側に隣接する住宅地エリアや、実需中心のマーケットでは依然として需要が底堅く推移している。これらのエリアでは購入者の多くが自己居住目的であり、生活利便性や通勤利便性を重視した需要が安定的に存在している。

つまり現在の東京都マンション市場は、「都心高額エリア」と「実需中心エリア」で異なる動きを見せ始めている。最近では、都心部の在庫増加を理由に「不動産バブル崩壊」といった見方も一部で聞かれるようになっている。しかし現時点のデータを見る限り、東京都全体の住宅需要が急激に失われている状況とは言い難いように思われる。

需要の再配置が進行

むしろ起きているのは需要の消失ではなく、需要の再配置だ。都心部の一部高額マンションで流動性が低下する一方、戸建住宅や実需中心エリアには引き続き需要が流入している。山手線内側で滞留し始めている在庫についても、市場で受け入れられる価格水準まで一定の調整が進めば、再び実需層が購入しやすい環境になる可能性がある。

東京都は依然として人口集積力が高く、住宅需要そのものが強いマーケット。そのため、現在見られている変化は市場崩壊の前兆というよりも、急激な価格上昇によって生じた歪みが修正され、より実需に基づいた健全な市場へ移行する過程と捉えることができるだろう。

今後の注目ポイント

今後の東京都住宅市場を読み解く上では、マンション価格だけでなく、戸建住宅への需要流入やエリア間の需要シフトにも注目していく必要がある。東京都の住宅市場では、マンション価格の高騰が続く一方で、より広さを確保できる戸建住宅へと購入者の関心が移りつつある。住宅需要が消えたのではなく、選ばれる住まいの形が変化していることを示す調査結果といえそうだ。