今回は都営地下鉄新宿線の一之江駅周辺を歩く。このエリアは23区の中でも家賃が最安クラスで、5万円台から住める「東京の田舎」として知られる。タワマンが建たない理由は大地主の存在にあるという都市伝説が語られている。
木守庵の甘栗が人気
環七に面した木守庵は、車で乗り付けて購入する客もいれば、自転車を店前に停めて慣れた様子で目当てのサイズを買っていく人もいる。久原秀介さん(2代目代表)と30分ほど立ち話をしている間にも、ひっきりなしに客が訪れた。
「コンビニに売っている甘栗と比べると価格は高めですが、地元の人がよく買っていってくれます。変な言い方ですが、気に入ったものにはケチケチせずにお金を使う、そんな人が住む街なんです」と久原さん。
購入した甘栗をその場で食べてみると、栗の腹に親指の爪を当てて押すとパリッと割れ、つやつやの実が現れた。口に含むとほんのり甘い。久原さんは「コンビニやスーパーの甘栗に慣れている人には甘みが足りないかもしれませんが、うちは砂糖や甘味料を加えず、栗本来の甘みを引き出す伝統的な焼き方を守り続けています」と語る。
大地主T家の影響
街の人々の話を聞くと、地元の大地主一族「T家」の名前が頻繁に出てくる。犬の散歩をしていた70代の男性は「この辺りはタワマンがあまりないでしょう。なぜかというと、T家がしっかり街を管理しているからです。T家がある限り、街の様子を大きく変えるような再開発は進まないでしょうね」と話す。
別の住民からは「T家が地元で小売り商売をしているから、外から派手なスーパーなどは入ってこれない」という声も聞かれた。これらの話がどれだけ事実に基づくかは定かではないが、都市伝説のように語られていることだけは確かだ。
一之江抹香亭の静けさ
喧騒が嘘のような「一之江抹香亭」も見どころだ。このエリアは家賃が安い一方で、住民の懐はわりと潤っている。久原さんの言葉の裏には、住民は物価にうるさくなく、気に入ったものにはお金を使うというニュアンスがある。



