「松屋に松屋」というフレーズが話題を呼んでいる。牛めしチェーンの松屋が、東京・銀座の老舗百貨店・松屋銀座の地下食品売り場に、新たな常設店「松屋PREMIUM」をオープンした。黒い壁面に金色のロゴが印象的なこの店舗は、いつもの松屋とは異なる雰囲気を醸し出しているが、松屋であることは一目で伝わる。
話題性だけではない、デパ地下出店の本質
「松屋に松屋」という言葉の面白さは確かに強い入り口となっている。しかし、実際に商品を手に取ってみると、この新業態の本質は単なる話題性にとどまらない。いつもの松屋らしさを残しつつ、デパ地下で購入する理由を、肉の存在感でしっかりと作り上げているのだ。
松屋フーズHDの多業態展開と新たな挑戦
松屋フーズホールディングス(HD)は、牛めしの「松屋」だけを展開する企業ではない。2026年3月期の決算補足説明資料によると、同社は牛めし、とんかつ、ラーメン、鮨、国内その他・海外という複数業態を持ち、合計1573店舗(海外含む)を運営している。
- 牛めし:松屋 1185店舗
- とんかつ:松のや 195店舗
- ラーメン:松軒中華食堂・松太郎・六厘舎 他 132店舗
- 鮨:すし松・福松 21店舗
- 国内その他・海外:マイカリー食堂 他 40店舗
これらはいずれも、客が店に入りその場で食べる外食店舗として展開してきた。牛めし事業で培った店舗運営や商品開発のノウハウを、異なる業態に応用することで成長してきた。
今回の「松屋PREMIUM」が新しいのは、従来の飲食店形式ではなく、百貨店の中食売り場に進出した点にある。席を設けず、持ち帰り専用の商品として販売する。外食チェーンのクオリティを、百貨店の惣菜売り場で提供する。この組み合わせこそが、新業態の核心だ。
堅調な業績と中食市場への布石
松屋フーズHDの足元の業績は堅調に推移している。2027年3月期5月の月次速報によれば、全店売上高は前年比111.7%、既存店売上高は105.3%、既存店客数は100.1%、客単価は105.3%となっている。ただし、同社の月次注記によれば、既存店の数値は牛めし事業店が対象であり、とんかつ事業・鮨事業・その他業態は含まれていない点に留意が必要だ。
「松屋PREMIUM」は次の市場を試す一手
松屋PREMIUMの出店は、中食市場への本格的な参入を意味する。デパ地下は高級感があり、普段松屋を利用しない層にもリーチできる。松屋のコアファンには新たな購買体験を提供し、百貨店の顧客には手軽な高品質惣菜としてアピールする。この戦略が成功すれば、今後の多様なチャネル展開への道が開かれるだろう。
松屋フーズHDは、牛めし一辺倒からの脱却を図り、中食という新たな市場を開拓することで、さらなる成長を目指している。デパ地下の常設店は、その第一歩として大きな意味を持つ。



