相続放棄が過去最多32.4万件、「負動産」回避で10年で7割増
相続放棄が過去最多32.4万件、負動産回避で10年で7割増

親族の死亡時に財産を引き継がない相続放棄が増加の一途をたどっている。最高裁判所が2026年6月にまとめた「司法統計年報」によると、2025年の相続放棄件数は前年比5%増の32万4000件に達し、過去最高を更新した。2015年の18万9000件から10年間で約7割増加しており、死亡者数の伸びを上回るペースで拡大している。

負動産を避ける動きが顕著に

相続放棄は、亡くなった人(被相続人)の預貯金などのプラス財産と借金などのマイナス財産の両方を一切受け継がない手続きだ。相続発生を知ってから3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要がある。本来は家業を継ぐ子など特定の相続人に財産を集中させる目的でも使われるが、近年はマイナス財産を回避する目的が目立つ。

特に問題となっているのが、活用見込みがなく処分も難しい土地や建物、いわゆる「負動産」だ。相続放棄をすれば、こうした負動産を引き取らずに済む。また、被相続人の借金だけでなく、固定資産税の支払い義務や空き家の管理責任からも逃れられる。

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疎遠な親族の相続回避も

相続手続きに詳しい埼玉県の司法書士・柴崎智哉さんは「疎遠だった親族の相続にかかわりたくないと相続放棄を選ぶ人は、以前から一定数いる」と指摘する。さらに「相続人を独自に調査した市役所から、土地の固定資産税の通知書が届いたり、被相続人の空き家の適切な管理を求められたりして、相続放棄の相談に訪れるケースもある」と話す。

2025年の死亡者数は159万人で、被相続人1人あたりの相続放棄件数は0.20件。2015年の0.15件から上昇しており、死亡者数の増加以上に相続放棄が増えている実態が浮かぶ。

手続きの注意点

相続放棄は他の相続人との合意なしに単独でできる。ただし、相続があったことを知ってから3カ月以内という期限が厳格に適用されるため、早めの対応が必要だ。また、相続放棄をすると、プラスの財産も一切受け取れなくなるため、借金より資産が多い場合は慎重な判断が求められる。

相続放棄の増加は、不動産の価値が下落する地域や、親族関係の希薄化が背景にあるとみられる。今後も高齢化の進展に伴い、相続放棄件数はさらに増加する可能性がある。

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