ジェントリフィケーション進行、住民生活に影 大阪・京都で都市開発の光と影
ジェントリフィケーション進行、住民生活に影 大阪・京都

都市再開発がもたらす高級化現象

観光や大規模イベントを契機とした都市開発により、景観が一変しつつある。街が美化され不動産価値が上昇する一方、住民の生活に負の影響を及ぼす「ジェントリフィケーション」が問題視されている。1960年代に英国の社会学者が指摘したこの現象は、地区の高級化・富裕化とも呼ばれ、日本でも都心回帰の流れの中で顕在化している。

京都・東九条:変わりゆく街並みと住民の懸念

JR京都駅南側の京都市南区東九条では、ホテルや民泊が立ち並び、スーツケースを引く外国人観光客が行き交う。歴史的に在日コリアンが多く居住し、独自の文化が息づく地域だが、近年は芸術文化による活性化が進められ、クリエイター集団「チームラボ」の大規模ミュージアムが昨年オープン。体験型アート施設の開設も予定されている。今年の公示地価は大阪圏商業地で道頓堀に次ぐ上昇率を記録し、街の至る所で工事が進む。古い家屋と新しいマンションやホテルが混在し、おしゃれなカフェや書店が出現する一方、地元向け商店が姿を消した。長年住む72歳の女性は「景観が変わり、街の歴史や住民への差別も覆い隠されてしまう。良くなったと捉える人もいるが、抵抗がある」と語る。地域では「住民が高額家賃を払える層に置き換わるのでは」との懸念が広がる。

東京五輪後の再開発:追い出された住民の記憶

2021年東京五輪・パラリンピックでは、国立競技場建設に伴い都営住宅が取り壊された。周辺には芝生広場やカフェ、マンションが整備され、大規模再開発が続く。元住人の94歳男性は「アパートのみんなで餅つきやバザー、花火を眺めたのが懐かしい。ここで生涯を終えるつもりだった」と話す。

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錦市場の「テーマパーク化」と住民離れ

昨年の訪日外国人は4000万人を超え過去最多を更新。生活の場が観光客向けに変容する「テーマパーク化」も顕著だ。京都市中京区の錦市場では、京野菜や乾物の専門店が閉店し、和牛や寿司、スイーツの観光客向け飲食店が増加。2025年までの3~4年で路面店の約4分の1が入れ替わった。調査した不動産鑑定士の木田洋二さん(64)は「住民の台所としての『京の台所』ではなくなっている。外国人ももっと京都らしい雰囲気を求めてくるのでは」と指摘する。

専門家が指摘する対策と課題

同志社大教授の森千香子氏(都市社会学・移民研究)は「地域の歴史や文化と無関係な開発は都市の独自性を失わせ、中長期的に魅力や将来性に悪影響を及ぼす」と警鐘を鳴らす。海外では家賃上昇を抑制する制度や土地用途指定による開発規制を強化する国が増加。公有地を活用した文化継承スペースの創出など、開発のあり方に工夫が求められる。森教授は「開発は必要だが、誰のための政策か見えにくい。地域の利益と負の影響を明確にし、多くの人が納得できる変化を目指すべきだ」と述べる。

ジェントリフィケーションを描く作品

この現象は小説や映画の題材にもなっている。英国在住のライター、ブレイディみかこさんの『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)は、ロンドンで実際に起きたシングルマザーたちの退去抗議を描く。映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は、サンフランシスコの高級化するエリアで、かつての自宅を取り戻そうとする黒人青年の物語で、オバマ元大統領が2019年の「お気に入り」に選んだ。

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