世界的な電気自動車(EV)シフトが加速する中、2025年時点でもガソリン車やディーゼル車などの内燃機関車が新車販売の約80%を占めるとの予測を、日本自動車工業会(自工会)が発表した。同予測は、主要自動車メーカーの生産計画や各国の規制動向を基に算出されたもので、EVの普及が想定よりも鈍化している実態を浮き彫りにしている。
EV販売シェアは20%未満、充電インフラが課題
自工会の試算によれば、2025年の世界新車販売台数は約9000万台と見込まれ、そのうちバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせたEVのシェアは約18%にとどまる。残りの82%はガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車(HV)などの内燃機関搭載車が占める見通しだ。特に、HVは内燃機関車に分類されるものの、燃費性能の高さから過渡期の主力として需要が続くとみられる。
「EVシフトは確実に進んでいるが、充電インフラの整備や車両価格の高さが普及の足かせとなっている」と自工会の担当者は指摘する。実際、2024年の世界新車販売におけるEVのシェアは約15%と推定されており、2025年に向けて微増するものの、急激な拡大は見込まれていない。
地域別で見えるEV普及の格差
地域別に見ると、中国では政府の強力な補助金政策と充電網の急速な拡大により、2025年の新車販売におけるEVシェアが約35%に達する見通し。一方、欧州連合(EU)では2035年までのガソリン車新車販売禁止目標を掲げるものの、充電インフラの整備遅れや経済的な不透明感から、2025年のEVシェアは約25%にとどまると予測される。
米国では、インフレ抑制法(IRA)による税額控除がEV需要を下支えするが、充電スタンドの不足や航続距離への不安から、シェアは約12%と低水準。日本では、HV人気の高さもあり、EVシェアはわずか5%未満と見込まれている。このように、地域によってEV普及のペースに大きな差が生じている。
自動車メーカーの戦略転換も影響
こうした状況を受け、一部の自動車メーカーはEVへの過度な集中から戦略を修正し、内燃機関車の改良やHVの拡充に軸足を移しつつある。例えば、トヨタ自動車は全方位戦略を掲げ、HVやプラグインハイブリッド車(PHEV)、水素燃料電池車(FCV)など多様なパワートレインを併売する方針を堅持。フォルクスワーゲン(VW)も、EV投資の一部を内燃機関車の効率向上に振り向けると発表した。
「内燃機関車の需要は依然として強く、メーカー各社は当面、HVを含む多様な選択肢を提供せざるを得ない」と、業界アナリストは分析する。特に、新興国市場では価格の安いガソリン車への根強い需要があり、EV一辺倒の戦略はリスクが大きいとされる。
環境目標達成への影響は
EVシフトの遅れは、各国が掲げる温室効果ガス削減目標の達成に影を落とす可能性がある。国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までのカーボンニュートラル実現には、2030年までに新車販売の60%以上をEVにする必要があると試算している。しかし、現状のペースではこの目標は達成困難との見方が強い。
自工会の予測は、EVシフトの現実的な壁を示すものとして、今後の政策立案やインフラ投資の方向性に影響を与えそうだ。自動車業界は、環境性能と実用性のバランスを取りながら、段階的な移行を迫られている。



