トヨタ自動車の河合満・元副社長は、60年にわたり生産現場一筋で過ごし、「おやじ」として親しまれてきた。デジタル化やAI(人工知能)時代のもの作りや、トヨタの強さについて聞いた。
デジタル化もAIもすべて道具
「最終的にはやっぱり人がものを作る。どんな時代になっても人が中心」と河合氏は言う。鍛造は60年で進化し、もの作りの工法も品物も精度が上がったが、「その技術をぽっと入れただけでは、うまくなんか絶対いかない」と指摘。「もっといいものを作るっていうのは、人間の感性とか今まで築いたものとか技とか、そういうものを入れなきゃできない」と語る。
どんな時代が来ても、人を育てて鍛え上げておくと何でも対応できるという。十数年前、水素燃料電池車(FCV)の「ミライ」を出したときも、心臓部の水素発生器はシャシー製造部が作った。精密な機械のため、生産現場は粉じん一つ許されない。みんなが勉強に行き、服装、髪形、手洗いなど200ぐらいのチェック項目を考え、自分たちで全部準備して始めた。ものの見事に、何の問題もなくやったという。「常に鍛え上げて、何でも対応する強い集団を作り続けることが大事」と話す。
デジタル化やAIは全て道具だとし、「あれをいかにうまく使って効率や生産性を上げたり、人の仕事を楽にしたりすることが問われる。あれに使われるようになったら、もう人間はいらなくなる」と警鐘を鳴らす。
エンドレスで繰り返す…トヨタの強さ
豊田章男会長が「もっといいクルマづくり」と言ったとき、どういうものか漠然として分からなかったが、よく考えれば、最高とか目標達成はないと気づいたという。トヨタには「カイゼン後はカイゼン前」という言葉があり、「ずっとエンドレスで繰り返す。だから最高なんてない。ずっとやり続けるのがトヨタの強さだ」と語る。「ずっと大切に引き継いでいかなければいかん」と続けた。
トヨタの教育は、世の中から「金太郎アメ」と言われた。優秀な人をたくさん作って、同じ思想の同じ人を作って、同じ感覚でものを作ってきた。「今まで同じように車を作ってきたのはトヨタの強みで、これだけ世界中に広がった」と振り返る。
ただ、今や地域によって、エネルギー事情によって動力を選択する。「電気が来てないと電気自動車(EV)は売れない。街中では環境に非常にいい車だ」とし、「うちはFCVもEVも全て一生懸命」と述べた。
生き残るのは技がある人
これからは、ロボットやAIに勝てる技のある人は生き残れると河合氏は言う。「もの作りにおいて、人が考えてもっといいものを作ること自体は変わらない。どの時代も一緒だと思う」と語る。
自身について、「僕だって60年以上いても、まだ日々進化している。今まで経験したことないことが日々起きる」と述べ、「勉強が大嫌いだったけど、今考えてみれば、一生勉強してきたし、挑戦をしてきた」と振り返った。



