EVシフト加速で希土類需要急増、中国依存脱却へ米欧が戦略的備蓄を開始
EVシフトで希土類需要急増、米欧が戦略的備蓄

EV需要拡大が希土類市場を変える

電気自動車(EV)の世界的な普及が、レアアース(希土類)の需要構造を大きく変えている。EVの駆動モーターには強力な磁石が不可欠で、その原料としてジスプロシウムやネオジムといった希土類元素の使用量が急増。国際エネルギー機関(IEA)の試算によれば、EV1台あたりの希土類使用量は従来のガソリン車の約5倍に達する。

この需要急増を受け、2023年の世界の希土類消費量は前年比15%増の約30万トンに拡大。特にEV向けが全体の4割を占めるまでに成長した。供給面では、中国が世界の採掘量の約9割を占め、精錬工程ではさらに高いシェアを持つ。この中国への極度の依存が、地政学的リスクとして認識され始めている。

米国、国防総省主導で備蓄計画

米国政府は2024年、国防総省を通じて希土類の戦略的備蓄を開始する方針を固めた。国防総省の調達担当者は「EVだけでなく、F-35戦闘機やミサイル防衛システムにも希土類は不可欠。供給途絶は国家安全保障上の脅威だ」と指摘する。米国は2025年までに、少なくとも6か月分の消費量に相当する約1万トンの備蓄を目標に掲げている。

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また、米国はオーストラリアやカナダとの協力を強化。ライナス・レアアース社(オーストラリア)がテキサス州に建設中の精錬工場は2025年の稼働を目指し、生産能力は年間約5000トンを見込む。これにより、中国以外でのサプライチェーン構築を急ぐ。

欧州連合、リサイクル技術に重点

EUも2023年12月、希土類の戦略的備蓄に関する法案を可決。2024年から3年間で約5億ユーロを投じ、加盟国での備蓄とリサイクル施設の整備を支援する。欧州委員会の内部文書によると、EU域内の希土類リサイクル率は現在5%未満だが、2030年までに25%に引き上げる目標を掲げる。

ドイツのシーメンスやフランスのヴァレオなど、自動車部品大手もリサイクル技術の開発に乗り出した。特に、使用済みモーターから希土類磁石を効率的に回収する技術が実用化段階にあり、2025年には商業プラントの稼働が計画されている。

日本、官民連携で対応急ぐ

日本は世界有数の希土類消費国でありながら、ほぼ全量を輸入に頼る。経済産業省は2023年、レアアースの安定供給確保に向けた戦略を策定。国内でのリサイクル促進とともに、ベトナムやインドなどとの共同探鉱を進める。また、産業技術総合研究所は、使用量を半減できる新しいモーター磁石の開発を進めており、2025年の実用化を目指す。

ある自動車メーカーの調達責任者は「EVシフトが進むほど、希土類の重要性は増す。中国への依存を減らすには、技術革新と国際協力が不可欠だ」と話す。

中国の反応と今後の見通し

中国商務省は、米欧の動きに対し「市場の歪みを生む保護主義的な措置だ」と批判。しかし、中国国内でも希土類資源の枯渇や環境規制の強化から、輸出管理を強化する動きがある。2023年には、希土類の輸出許可制度を厳格化し、一部品目で輸出量が前年比30%減少した。

専門家は、希土類の供給リスクを軽減するには、リサイクル技術の確立と、中国以外の生産能力拡大が急務だと指摘。EV市場の成長が続く限り、希土類を巡る国際的な競争はさらに激化すると予想される。

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