電気自動車(EV)の普及に伴い、使用済みバッテリーのリサイクル市場が急速に拡大している。調査会社の富士経済によると、世界のリチウムイオン電池リサイクル市場は2030年に約3兆円(約280億ドル)に達する見通しだ。これは2022年の約10倍の規模で、年平均成長率は30%を超える。
リサイクル事業の収益性向上
リサイクルの主な収益源は、リチウム、コバルト、ニッケルなどの希少金属の回収である。特にコバルトは価格が高く、リサイクル事業の採算性を左右する。欧州ではバッテリー規則により、2027年から使用済みバッテリーの回収率が義務化される。日本でも資源循環促進法の改正が検討されており、リサイクル市場の拡大を後押ししている。
米国のリサイクル大手Redwood Materialsは、2023年にネバダ州で年間処理能力2万トンの施設を稼働。同社のJB Straubel CEOは「2030年までに全米のEVバッテリーの50%以上をリサイクルする」と目標を掲げる。
技術革新と課題
現在主流のリサイクル技術は、焙焼や湿式精錬だが、エネルギー消費が大きい。新興企業の米Ascend Elementsは、黒鉛と正極材を同時に回収する新技術を開発し、コストを30%削減したと発表。一方、日本では住友金属鉱山がニッケル・コバルトの高純度回収技術を確立している。
課題は、回収した材料の品質とコスト競争力だ。バッテリーの設計が多様で、解体・選別の自動化が進んでいない。また、リサイクル材の価格が新鉱石より高い場合、需要が限られる。国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までに世界のリチウム需要の10%をリサイクルで賄う必要があると試算する。
主要企業の動向
韓国大手のLG化学は、2023年にリサイクル子会社を設立し、2025年までに年産2万トンの施設を建設する計画。中国のCATLは、バッテリー生産時に発生する端材をリサイクルするクローズドループシステムを導入。欧州では、ノルウェーのHydrovolt社が年産1万2000トンのリサイクル工場を稼働中だ。
日本では、トヨタ自動車が2023年にリサイクル技術の実証実験を開始。ホンダも日産化学工業と協業し、リチウム回収率95%以上の技術を開発中。政府は2024年度からバッテリーリサイクル設備投資への補助金を拡充する方針。
市場拡大の見通し
富士経済の予測では、リサイクル市場の成長を牽引するのは北米と欧州で、両地域で全体の6割を占める。アジアでは中国が最大市場となるが、日本は技術面で優位性を持つ。2025年以降、EVの廃棄が本格化し、リサイクル需要が急増する見込み。
バッテリーリサイクルは、資源確保と環境負荷低減の両面で重要性を増す。2030年には、リサイクル材がバッテリー原料の20%を占めるとの試算もある。各社の技術開発と規制強化が、市場の持続的成長を支えるだろう。



