ESG投資において、「国家の安全保障」を考慮しなければならなくなっている。元国家安全保障局長で北村エコノミックセキュリティCEOの北村滋氏は、従来の持続可能性評価の再設計を提言している。
安全保障を捨象した評価の限界
従来のESG投資の実務では、防衛産業は慎重な扱いを受けてきた。対人地雷、クラスター弾、化学・生物兵器など国際条約で禁止された兵器に関与する企業の排除は広く共有された規範だった。しかし、一部の運用機関や指数はこれを超えて防衛関連企業全般を投資対象から除外し、欧州では商業銀行がレピュテーションリスクを考慮して防衛関連企業への融資や口座開設に消極的な事例が報告されている。
ただし、実態は一様ではない。防衛セクターへの一定の投資を維持してきたESGファンドも相当数存在し、「ESGが防衛を全面的に排除してきた」という理解は正確ではないと指摘する。
評価軸の欠如がもたらす問題
問題は全面排除ではなく、安全保障への貢献という評価軸が体系の中に存在せず、防衛関連であること自体が減点要因あるいは回避要因として機能する傾向があったことだ。
安全保障を捨象した持続可能性評価は、環境や人権といった価値を守るための条件そのものを弱体化させる可能性を内包している。持続可能性の前提条件としての安全保障が不可欠であり、ここに従来の枠組みの再検討を要する理由がある。



