全国にわずか300頭ほどしか存在しない「幻の柴犬」と呼ばれる美濃柴犬。その絶滅を防ぐため、岐阜県立大垣養老高等学校の生徒たちが独自の保護・繁殖活動に取り組んでいる。ノンフィクション作家・今西乃子氏の著書『われら 美濃柴犬研究班!ぼくらの学校で命をつなぐ』より、学校のお父さん犬「ほし」くんの視点で描かれた美濃柴犬の物語と、同校動物科学科「美濃柴犬研究班」の活動を紹介する。
戦時下の悲劇が生んだ希少犬種
美濃柴犬は、岐阜県のご当地犬で、濃い茶褐色の毛が特徴だ。かつては日本各地で見られたが、戦時中に「犬をお国のために供出」する政策の犠牲となり、頭数が激減。一時は絶滅の危機に瀕した。現在でも全国に約300頭しか確認されておらず、幻の柴犬とも呼ばれる。
同校の美濃柴犬研究班は、この貴重な犬種の保護と繁殖に取り組む。研究班の6期生が中心となり、学校で飼育する美濃柴犬の「ほし」(4歳、オス)と「杏子」(6歳、メス)のペアリングを通じて、次世代への命の継承を目指している。
高校生たちの熱意と日常
「ほし」は2025年に同校にやってきたお父さん犬で、杏子との間に赤ちゃんを授かることを期待されている。生徒たちは朝夕の世話や健康管理、発情期の観察など、細やかなケアを日々行っている。研究班の活動は単なる飼育に留まらず、美濃柴犬の遺伝的多様性を保つための血統管理や、地域への普及啓発にも及ぶ。
今西氏は著書の中で、生徒たちと犬たちが全力でぶつかり合う愛おしくも切ない日常を描いている。戦争という人間の歴史が生んだ悲劇を乗り越え、未来へ命をつなぐ高校生たちの奮闘は、多くの読者に感動を与えている。
絶滅の危機を乗り越えて
美濃柴犬の保護活動は、同校の動物科学科の特色ある取り組みの一つだ。生徒たちは専門知識を学びながら、実際の繁殖計画を立案・実行する。2025年現在、杏子の妊娠が確認されており、研究班は出産に向けた準備を進めている。成功すれば、美濃柴犬の個体数増加に大きく貢献することになる。
「ほし」は自身を『超美男子』と称し、研究班の生徒たちと共に、美濃柴犬の未来を担う存在として日々を過ごしている。彼らの活動は、絶滅危惧種の保護における教育現場の可能性を示す好例と言えるだろう。



