「立ち食いそばと、町のそば屋の間には圧倒的な断絶があります。しかし、町のそば屋が矜持(きょうじ)を持ったまま、立ち食いという形式を取った。それがゆで太郎なのです」。ゆで太郎システムの池田智昭代表取締役はこう語る。
「立ち食いそば」という言葉の期待値の低さを入口に
東京では「ゆで太郎=立ち食いそば」というイメージはまだ根強い。池田氏は「『立ち食いそば』という言葉が持つ『まあそういうものだろう』という期待値の低さを入口にしているともいえます。その結果、実際に食べたときの驚きがある。それが私たちの狙いなのです」と説明する。
腹いっぱい食べられる店がない問題から生まれた満腹セット
ゆで太郎を始めたそもそもの動機は、仕事の合間に腹いっぱい食べられる店がないという問題に頻繁に直面したことだった。ほっかほっか亭の営業マン時代、地方出張で外回りをしているときは食事に常に頭を悩ませていたという。
「郊外のロードサイドに行けば確かに店はあります。しかし、牛丼、ラーメン、コンビニ、この3つしかないんです。仕事の時間も一定ではありませんから、弁当を持ち歩く習慣もありません。となると外食するしかないのですが、本当に選択肢が少なかった」と振り返る。
「私はいつも『そばが食べたいな』と思っていました。町中でそば屋を見つけても、薄暗くてやっているかどうかわかりません。猫が中で寝ていたりしてのどかなのはいいのですが、めったに客が来ないのか湯も沸かしていない。注文してから料理が出てくるまで20分以上かかります」
「ようやく出てきても、量が少ない。当時は30代で食欲も旺盛でしたから当然大盛りを食べたいし、丼も付けたい。でもそれができる店がなかった。腹いっぱい食べられるそば屋が郊外にあったら絶対売れるとずっと思っていました」
利益より満足度を売る姿勢が22年連続黒字に
ゆで太郎の看板メニューといえる「満腹セット」は、そのときの思いが出発点だ。「稼ぐために作ったメニューではありません。そば店で腹いっぱいになるにはどんなメニューを提供すれば喜んでもらえるだろう、という思想を体現したものです」と池田氏は語る。
利益率を上げるために量を減らす発想はなく、「腹いっぱい食べて満足」を追求した結果、22年連続黒字を達成している。



