平均年齢67歳の秋田県シニアeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」、東京ゲームショウで活動語る
平均年齢67歳のシニアeスポーツチームが東京ゲームショウで活動を語る

平均年齢67歳、60歳以上のプレイヤーで構成される秋田県のシニアプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」が、9月17~21日に幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2026」のマウスコンピューターブースでトークセッションを行い、活動を続ける原動力やシニア世代にとってのeスポーツの魅力、地域で活動を広げるための課題について語った。

高齢化が進む秋田で誕生したシニアeスポーツチーム

登壇したのは、マウスコンピューター取締役 法人営業本部 本部長の金子覚氏、マタギスナイパーズの運営責任者を務めるエスツーの土門悠氏、同チームの選手であるmark25氏とNAGI氏、秋田県eスポーツ連合の緒方無双氏の5人。

「高齢者が生き生きとしたら、街は盛り上がっていくのではないか」という発想から生まれたマタギスナイパーズは、サーバー管理などを手がけるIT企業のエスツーが運営している。秋田県の高齢化という地域課題を逆手に取り、若い世代のものという印象が強いeスポーツに高齢者が挑戦することで、地域を盛り上げようという狙いがあった。さらに、秋田県に伝わる狩猟文化「マタギ」とシューティングゲームを組み合わせてチーム名を付けた。

土門氏によると、チーム設立時には記者会見を開き、地元メディアを通じて選手を募集したという。「そこで地元のメディアに載ったので、それを見て応募してきてくださった方は多かったですね」と土門氏は話す。

パソコン教室から始まった本格的な練習体制

当初から選手たちがゲームに慣れていたわけではない。「最初はパソコンでゲームをやったことがない方たちばかりで、さらにパソコンの使い方も分からない方が多かったので、パソコン教室からスタートしていました」と土門氏は振り返る。シャットダウンの方法といった基本操作を一つずつ教え、パソコンを使えるようになってからゲームの操作やルールを覚えていったという。

現在はチームをトップチームとアカデミーに分け、平日の週5日、オンラインで練習を実施している。トップチームは13時から17時、アカデミーは19時から22時という本格的な練習体制だ。秋田県内の大学生や他県の高校生などから対戦の申し込みを受けることもあり、世代を超えた交流も生まれている。

70歳のmark25氏は、同年代の知人をeスポーツに誘っても、パソコンやゲームに抵抗を感じ、「自分にはできない」と答える人が多いと話す。一方で、かつての職場の同僚や後輩からは、活動をテレビやインターネットで見たという声が届いている。「ネットで見ましたよ、テレビで拝見しました、頑張ってください。こういう温かい応援は多々いただいております」と語った。

「次の試合こそ勝ちたい」70歳の選手が語るゲームの魅力

mark25氏は、5年間活動を続けてきた理由について、対戦相手が人間であることの面白さを挙げた。チームが取り組んでいるのは5人で戦うFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)だ。キャラクターの操作や射撃、試合の進め方など、覚えなければならないことは多い。5年間練習を続けても思うように上達できず悩むこともあるが、対戦相手が人間だからこそ毎回異なる展開が生まれるという。

「相手がいる、相手も人間、常に同じゲーム内容にならない。それが私としてはとにかく面白い」「絶対、次の試合は勝つぞ、絶対次の試合はいいプレーをするぞという、常にその頭になっている。だけど、それがなかなかうまくいかない。そこが私の一つの大きなモチベーションになるんですよ」とmark25氏は語った。

一方、NAGI氏は活動を続ける理由として仲間とのつながりを挙げ、「素晴らしいチームメイトと一緒に毎日練習ができるということで、生活に張りが出ますし、家事も効率よく済ませて、パソコンの前に座るようにしようとしています」と話す。「本当に素晴らしいチームメイトに出会えたことや、こうやって外部の皆様とお知り合いになれ、緊張感のある毎日をこの年になって過ごさせていただいて、感謝しております」と述べ、こうした出会いについて「私の人生の宝物になっています」と語った。

ゲームに取り組むことで、パソコンやインターネットとの付き合い方も変わっている。mark25氏は以前からパソコン自体は好きだったものの、ネットワークを利用する機会は少なかったという。「SNSどころかというくらい身近になって、もううれしくてしょうがないという感じです。こんなに技術は進歩しているんだなと改めて感じてうれしいです」と語った。

シニア世代ならではの苦労もある。NAGI氏はパソコンの操作やトラブルへの対応が難しいと感じることがあるが、チームにはパソコンに詳しいmark25氏をはじめ互いに助け合える仲間がいる。「みんなでオンラインで話し合って、悩みを相談して、解決できるような感じになっているので、それもまた素晴らしいことだと本当にありがたく思っています」と話す。一方、mark25氏は加齢に伴う視力の変化を課題に挙げ、「これを何とかハード的に何とかならないかな、ソフトではもうどうにもならないかなと思っています」と語った。

地域でeスポーツを広げるには継続できる仕組みが必要

マタギスナイパーズの活動を地域に広げていくうえでは、運営費や設備の確保も重要になる。土門氏によると、チームはエスツーの一事業として運営され、運営を社員が担当することで人件費を抑え、当初の練習場所には同社が入居するビルの一角を利用した。パソコンなどの機材についても、企業からの提供を受けることで初期費用を抑えたという。土門氏は、必要な設備をすべて購入すると200万~300万円程度かかる場合もあると説明し、できるだけ小規模に活動を始めることが重要だったと振り返った。

一方、秋田県eスポーツ連合の緒方氏は、地域でeスポーツを普及させる際の課題として収益化と活動の継続性を挙げた。単発のイベントだけで黒字化することは難しく、イベントの開催そのものを目的とするのではなく、参加者がゲームを楽しみ継続して活動できる環境を整えることが重要だという。「ゲームって楽しいんですよっていうところを、絶対ここ外しちゃいけない」と緒方氏は強調した。

秋田県eスポーツ連合では、活動を始めるにあたりパソコンを5台程度設置した「eスポーツトレーニングセンター」を用意した。まずは地域の人々が集まれる場所を設け小規模なイベントを開催し、そこから地域のコミュニティとの連携を広げ、より大きなイベントへと発展させていく取り組みを進めてきたという。緒方氏は、eスポーツイベントの開催を希望する自治体や団体から、目的が明確でないまま相談を受けることもあると指摘し、誰に、何を目的として参加してもらうのかを明確にする必要があると述べた。

土門氏は、今後全国各地にマタギスナイパーズのようなシニアeスポーツチームが誕生することを期待している。各地にチームが増えれば、互いに対戦し切磋琢磨できる環境が生まれるためだ。緒方氏は、シニア世代のeスポーツを高齢者だけの特別な活動として捉えるのではなく、新しいことに挑戦する選択肢の一つとして考えてほしいと語った。

マウスコンピューターが支える地域のeスポーツ活動

地域でeスポーツを始める際には、ゲーミングPCなどの機材をどのように調達するかも課題となる。マウスコンピューターの金子氏は、同社が日本eスポーツ協会(JESU)と連携し、eスポーツ向けPCの無償貸し出しなどを支援していることを紹介した。また、同社のパートナー企業にはゲーミングPCを短期間レンタルできる事業者もあり、機材を購入する前に小規模な取り組みから始める方法もあるという。「スモールスタートで何かトライしたいといった時には、ぜひJESUさんの方にご相談いただければ、そういう支援を受けることもできます」と金子氏は話す。

さらに、マウスコンピューターでは学校や商業施設、eスポーツ施設などへのPC導入に加え、長期保証や24時間365日の電話サポートなども提供している。金子氏は、機材の提供だけでなく導入方法や運営上の課題についても、パートナー企業を通じて支援していきたいとの考えを示した。

金子氏は、Windows 95の登場以降、仕事などでパソコンを使ってきた世代が次第にシニア層に入っていることに着目する。「パソコンが普及したのはWindows 95からで、その時パソコンに携わった方々がどんどん年齢が上がって、シニア層に入っていく。今までは仕事で使っていたパソコンの一つの選択肢として、ゲームというのもあるのかなと思います」と述べた。また、「例えば麻雀とか囲碁とかをオンラインでできるものもあるので、派手なシューティングゲームだけではなく、自分が昔やっていたものが今ゲームの中でできる。シニアの人たちのゲームというのも、今後の可能性は大いにあると思います」と語った。

シニア世代を若年層とは異なるゲームユーザーとして捉える必要があるのかという問いに対しては、「そこは分ける必要はないと思います」「変にそこで敷居を作る必要はないのかなと思います」と答えた。高校生や社会人などさまざまな世代がeスポーツに取り組んでおり、年齢を重ねることで動体視力や視力が衰えシューティングゲームが難しくなることはあるものの、ゲームを楽しむこと自体に年齢による区切りを設ける必要はないという。

eスポーツの普及については、ゲームを楽しむ世代や年齢層は広がっているとみる一方、その実態が十分に可視化されていないことを課題に挙げた。スマートフォンゲームの普及が目立つものの、PCゲームを楽しむ人も増えているとの見方を示した。さらに、「自分たちが経験した時代のゲームとは違って、ゲームから得られるものといったメリットのところを、もうちょっと伝えていければいいのかなと思います」と述べ、ゲームに対する従来のイメージを変えていくことの重要性を指摘した。金子氏は、マタギスナイパーズの活動についても、「ゲームであっても、人と人との対戦とかコミュニケーションの中でつながりができてくる。やっぱりそれって人と人との支え合いじゃないですけど、魅力的な部分の一つでもあると思います」と語った。