特注ユニットバスメーカー「日ポリ化工」(本社・奈良県山添村)が創業期に開発したカプセル型ポータブルユニットバス「2号機」が、大阪府内の住宅で見つかった。家風呂が普及していなかった時代に新たな価値観を提供した象徴的な製品で、今後は自社のものづくりのルーツを若い社員に知ってもらうために活用するという。
「60年前の風呂、探しています」広告が実を結ぶ
昨秋、阪急大阪梅田駅(大阪市北区)などに掲示された広告が通勤・通学客らの目を引いた。「60年前の風呂、探しています。」というキャッチコピーと、2号機の写真を強調したシンプルなデザイン。同社によると、阪急や近鉄の駅やバス停など約20か所に計約100枚を貼った。
1962年に大阪府東大阪市で創業した同社は、銭湯に通うことが主流だった時代に「家に温かい風呂を届けたい」と考え、64年に開発したのが2号機だった。耐久性が高い繊維強化プラスチック(FRP)製で、浴槽とシャワー、洗い場が付く。新興住宅地で各家庭のベランダにロープでつるして搬入される様子が近所で話題となり、口コミで広がったという。
買い取りキャンペーン開始、苦戦から転機
東京都港区にあるショールーム「BATHVERSE(バスヴァース)」には、同社が唯一保有する2号機が展示されている。家風呂が当たり前ではなかった頃に開発から製造、販売までを自社で手がけた2号機は、同社のものづくりの原点を伝える「シンボル」だ。創業当時を知らない社員が増える中、多くの社員に製品を見てもらおうと、現存する2号機を「風呂文化遺産」として買い取るキャンペーンを企画し、昨年9月から情報提供を呼びかけた。
創業者・中塚伊三郎さんの次男である信二郎社長(41)は「思っていた以上に(2号機が)残っていなかった」と振り返る。目撃情報は東は群馬から西は岡山まで20件届いたが、現地に行くとよく似た他社製品だったり、すでに処分されていたり。企画始動から2か月で「手遅れなのでは……」と暗雲が立ちこめた。
転機は昨年12月中旬頃、大阪府内の男性からの情報だった。「亡くなった祖母の住まいにあったお風呂が、よく似ている」。同府松原市の住宅に向かうと、日ポリ化工の製品シールが貼られた2号機と判明した。
発見の喜びと後継機との出会い
プロジェクトを担当した経営企画部の平山健一主務(27)は「正直なところ、不安で4か月が本当に長く感じた。ようやく見つかり、ほっとした」と当時の心境を語る。情報提供した男性は同社を通じ、「祖母の家を取り壊す前にユニットバスが見つかってうれしい。多くの人の目に留まり、役に立つことを感慨深く思う」とコメントを寄せた。
キャンペーン期間中に思わぬ発見も。奈良県香芝市にある工場跡地の関係者から昨年11月、「工場の社員寮で利用していたものが残っている」と情報提供があった。確認すると、2号機の後継機である1975年製の「バスハウス」と判明し、「風呂文化遺産」として買い取った。中塚社長は「父が丁寧に使ってくれたお客様に恵まれていたから、今まで残っていたのだろう」と感慨深そうに話した。
見つかった2号機は今年4月に回収し、山添村の本社工場で破損していた脚部を修復した。中塚社長は「これからも変わらず、今までにないものを作る会社の姿勢を大切にしたい」と、決意を新たにしている。



