iPS細胞の倫理、「何でもできる」と「何でもしていい」は違う 石井哲也・北海道大教授
iPS細胞の倫理、「何でもできる」と「何でもしていい」は違う

人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、受精卵を壊さずに作れる「倫理的な細胞」として歓迎された。だが、体の細胞を生命の出発点に近い状態へ戻し、多様な細胞へ変えられる技術は、当初は想定されなかった問いも生んだ。脳に似た組織、動物の体内で育つ人の臓器、精子や卵子の作製まで、研究の可能性は広がっている。医療では2製品が条件・期限付き承認された一方、過剰な期待、長期安全性、価格と公平な利用も問われる。

「何でもできる」と「何でもしていい」の違い

石井哲也・北海道大教授(生命倫理)は「何でもできることと、何でもしてよいことは違う」と語る。iPS細胞が開いた可能性を社会はどう制御し、誰のために使うのか。次の20年に向けた倫理的課題を聞いた。

受精卵を壊さない、その先

多様な細胞に変われる能力を持つという意味で、先行した胚性幹細胞(ES細胞)は、作る際に人の受精卵を失わせることが大きな倫理問題でした。一方、iPS細胞は皮膚や血液などから作れるため、受精卵を壊さず、患者本人の細胞も使える。医療応用に理想的で倫理的な多能性幹細胞だと評価されました。

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しかし、作製しやすく、さまざまな細胞へ変えられる「自在性」が、新たな課題を生みました。脳に似た組織、人と動物が混じる個体、精子や卵子など、通常は時間や場所の制約で得られないものまで研究室で作れる可能性が開けたからです。

ES細胞との根本的な違い

ES細胞も多様な細胞へ変われますが、あくまで特定の受精卵から生まれた細胞です。iPS細胞なら、認知症の患者さんの皮膚から、その人の遺伝情報を持つ脳に近い組織を作ることができます。患者ごとの病気を再現できる点は、ES細胞にはない強みです。

一方、iPS細胞はありふれた細胞からさまざまな組織、生殖細胞まで作れる可能性があり、これは元の細胞を提供した人の者かもしれません。どこまで許されるかを先回りして考える必要があります。

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