「思わず笑わせ、その後に考えさせる」研究に贈られるイグ・ノーベル賞の授賞式が9月3日(日本時間4日)、スイスで開かれる。賞ができて35年。創設者で今も運営の中心にいるマーク・エイブラハムズ氏(70)が今年7月、米マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅で、この賞に込めた思いを語った。
きっかけは「経営難の科学雑誌」
科学が好きで、世の中の変わった研究に興味があったというエイブラハムズ氏。読んで楽しい科学記事を時々書いていた。原稿を売り込むためにある雑誌社に電話をかけたところ、「君が編集長になってくれ」という話になった。経営がすでに行き詰まっていた、そのユーモア科学雑誌を引き受けたのが1990年だ。
編集者になってさまざまな科学者と知り合いになる中で、興味深い研究が無数にあることを知った。「人生すべてが捧げられているようなものもあった。しかし、誰も知らない。それは間違っていると思った」と振り返る。イグ・ノーベル賞は、雑誌の知名度向上と同時に、興味深い研究を笑いとともに紹介することを目指して始めたものだという。
「笑い」はパロディーではなく「扉」
マサチューセッツ工科大(MIT)の施設で開いた最初の授賞式は、幸い話題になって入場券が完売し、注目されるようになった。
賞の候補となる研究に関する情報は、毎日40~50件、エイブラハムズ氏のもとに届く。「イグ・ノーベル賞を知る、文字どおりありとあらゆる人から『こんなおもしろい研究がある』『笑ってしまう論文を読んだ』と連絡が来ます」。インターネットが普及する前の90年代前半は手紙がたくさん届き、今は電子メールが主流となっている。
エイブラハムズ氏は「イグ・ノーベル賞は、『ノーベル賞のパロディー』ではありません」と強調する。ノーベル賞と競争しているわけではないし、ノーベル財団や賞の関係者に不快な思いをさせないよう、ずっと気を使ってきたという。「笑い、ユーモアは関心を持ってもらうための『扉』」と語る。



