富士山の5合目から頂上を目指す山梨県側の吉田ルートと静岡県側の須走ルートが7月1日に山開きし、2026年の富士登山シーズンが本格的に開幕する。世界遺産にも登録された日本の象徴的な山だが、その陰で深刻化する無謀な登山や救助隊の疲弊について、アルピニストの野口健氏が警鐘を鳴らしている。
入山料徴収と規制の広がり
野口氏は、2年前から導入された富士山の入山料徴収や登山規制について、「画期的で、他の山に広がるだろう」と評価する。長年にわたって富士山とかかわってきた野口氏は、入山料や入山規制には登山者を減らす側面があることから、導入に向けた議論の中で観光業界などから反対の声も上がっていたと指摘。それでも安全面などの理由から導入されたことを「画期的な出来事」と位置づけた。入山料徴収は北アルプスなどでも議論が始まっており、「他の地域でも広がるだろう」と予測する。
閉山期の無謀な登山が深刻
野口氏が特に深刻視するのは、閉山期の無謀な登山だ。閉山期は登山道を使わなければ登山そのものは違法ではなく、雪がある時期にピッケルやアイゼンなどを持たず、一人で登って滑落してしまう人が目立っているという。野口氏は「世界遺産に選ばれて話題になりインバウンド(繁忙客)が増えたことや、『SNSなどでバズりたい』という安易な理由で登る人がいることも原因」と指摘。「冬の富士山がどれだけ危険かを認識してもらわないといけない」と訴える。
救助隊の疲弊とペナルティの必要性
こうした登山は救助隊の疲弊も招いている。野口氏は「山に慣れていない遭難者は自分が今どこにいるかもわからない。強風時などはヘリが飛ばせず、レスキュー隊が歩いて救助に向かう。レスキュー隊員はかなり疲弊している」と実情を明かす。その上で、装備不足などの無謀な登山で遭難するようなケースは「強いペナルティをかけてもいいのではないか」と語る。すべての登山者を一律に規制すべきではないと前置きしつつ、無謀な登山に対する罰則強化の必要性を訴えた。
効果的な対策と今後の展望
また、遭難を未然に防ぐ手段として、閉山期登山の事前登録制や、レンジャー隊員による登山者の装備確認、遭難時にピンポイント救助がしやすいGPSの持ち出しも有効としている。野口氏は「山に親しむこと自体を規制するのではなく、無謀な行為には相応の責任を求めるべきだ」と述べ、安全な登山文化の醸成を呼びかけている。



