宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星衛星探査機「MMX」が20日、鹿児島県の種子島宇宙センターから大型主力ロケット「H3」10号機で打ち上げられた。MMXは予定の軌道で分離され、打ち上げは成功した。火星の衛星フォボスの試料を地球に届ける「サンプルリターン」を目指す約5年に及ぶ長期ミッションが始まった。火星圏からの試料回収に成功すれば世界初となる。
打ち上げ成功、3回連続の快挙
JAXAによると、H3は同日午前4時41分、予定の時刻に打ち上げられた。発射から約1時間11分後には、目標の高度約592キロ・メートル付近でMMXを分離。MMXからの電波も地上局で正常に受信できたという。H3の打ち上げ成功は3回連続で、成功率は10機中8機の80%になった。
MMX(全長約5メートル、幅約9メートル)はJAXAと三菱電機が約553億円かけて開発した。日本の探査機としては過去最大級で、フォボスまでの総飛行距離は約7億キロ・メートルに及ぶため、打ち上げ時の重量約4・5トンの60%超は燃料が占めた。
約5年の長期ミッションへ
MMXは、来年8月にも火星の周回軌道に到達する。その後、周回軌道を飛行しながら、火星から約6000キロ・メートル離れたフォボスの表面をカメラで観測。2029年初め頃には2回に分けて衛星に着陸し、搭載したロボットアームで砂などの試料を採取する。
採取後はフォボスを離れ、別の衛星ダイモスの近くを高速で通過しながら観測する「フライバイ」を行う。30年11月には火星圏を出て地球に向かい、31年7月に試料入りカプセルを豪州の砂漠地帯に投下する。
世界初のサンプルリターン挑戦
日本の探査機が天体試料のサンプルリターンに挑戦するのは、20年に小惑星リュウグウの試料を持ち帰った探査機「はやぶさ2」以来となる。最大の目的は、試料の分析でフォボスがどのように形成されたのかを探ることだ。起源が分かれば、太陽系形成のメカニズムの解明につながる可能性がある。
フォボスには火星から飛散したちりが含まれているとみられ、将来の有人探査も見込まれる火星の環境を探れると期待される。火星探査の拠点に衛星が活用できるかの検証にも役立てる。MMXには、米航空宇宙局(NASA)など海外の4宇宙機関も観測機器の提供などで協力。このうち独仏が開発した小型探査車はMMXの着陸前にフォボスへ投下され、着陸地点の選定などに活用される。
打ち上げ後に記者会見したJAXAの川勝康弘・プロジェクトマネージャは「MMX分離後に通信を確保できるかどきどきしたが、計画通りいってほっとしている」と話した。