深海の炭素固定、主役不在の謎 少数派の「食べる側」細菌が鍵 北海道大など解明
深海の炭素固定、主役不在の謎 少数派細菌が鍵 北大など

海水中には二酸化炭素などの無機物として溶けている炭素があり、生物がこれを取り込んで糖やアミノ酸などの有機物に変える働きを「炭素固定」と呼ぶ。この働きを調べれば、海で炭素がどう有機物に変わり生命を支えるかが分かり、温暖化に伴う海の変化を読む土台にもなる。しかし表層では植物プランクトンの光合成が盛んなため、光合成以外の炭素固定は見えにくい。

研究者は太陽光の届かない深海に目を向けたが、そこで測った炭素固定の量は、主役と考えられてきた微生物だけでは説明できなかった。北海道大などの国際研究チームによる10年越しの研究で、意外な働き手が浮かんだ。

増えた数字、見当たらない主役

発端は2010年、大西洋の研究航海で行われた実験だった。深海から採った海水に、微生物の餌となる有機物や、化学反応からエネルギーを得る材料となるアンモニア、硫黄化合物を条件を分けて加えた。すると、有機物を加えた海水で微生物の増殖と炭素固定がともに活発になった。

光のない海では、アンモニアや硫黄化合物などを利用する「化学合成」の微生物が炭素固定の主役だと考えられていたにもかかわらずだ。研究者が遺伝子の働きからどの微生物が活発になったのかを探ると、想定された化学合成の微生物だけでは増えた炭素固定の量を説明できなかった。数字は増えたのに主役がいない。別の働き手がいるのではないか。

食べる側の少数派が鍵

有機物を食べて生きる微生物も、無機炭素を取り込むこと自体は半世紀以上前から知られていたが、ごく小さな補助的な働きとみられていた。しかも、海水をまとめて測る従来の方法では、化学合成を行う微生物による取り込みと、食べる側の微生物による取り込みが一つの数字に混ざるため、誰がどれだけ担ったのかを分けることができなかった。

転機となったのは、世界の海から集められた微生物の遺伝子やタンパク質の膨大なデータを利用できるようになったことだ。研究チームが無機炭素を取り込む反応に使う酵素をどの微生物が盛んにつくっているか調べると、海のどこにでもいるが普段は少数にとどまる、ある細菌の一群が浮かび上がった。しかも、それは他の生物がつくった有機物を「食べる側」で、炭素固定の主役とはみなされてこなかった。

なぜ食べる側が炭素固定の数字に現れたのか。実際の海で追うと、見過ごされてきた仕組みと、予想以上の規模が見えてきた。