ネアンデルタール人と現生人類(ホモ・サピエンス)が文化や価値観を共有していた可能性があると、京都大学や国立科学博物館、トルコの大学などの国際共同研究グループが発表した。トルコ南部の洞窟遺跡で両者の化石が同じ地層から見つかり、同じ製法の石器などが確認された。
発掘調査の成果
研究グループはトルコ南部の「ウチャーズリII洞窟」で2021年から発掘調査を開始。約7万7000年前~約4万7000年前の地層から多くの遺物を発見した。X線CT画像による形態分析の結果、約7万7000年前~約5万9000年前の地層からネアンデルタール人2個体、約5万9000年前~約4万7000年前の地層から現生人類3個体の化石が見つかった。
両者の化石が見つかった地層からは、約1万9000点の石器と約2万4000点の動物の骨の化石が出土。石器は同じ手法で作られており、両者が同じような石器で同じ動物を狩猟し、同じ部位を洞窟に持ち帰って食べる同様の生活をしていたと考えられる。
装飾品の存在
また、食用に適さない「アフリカタモト」などの貝59点も見つかった。食べた形跡はなく、精密な加工で微小な穴が開けられており、装飾用のビーズとみられる。
研究グループは、ネアンデルタール人も現生人類も同じ石器や食料調達戦略を持ち、同じ貝を装飾品として愛でていたことから、共通の文化様式や「役に立たないが美しいもの」に価値を見いだす美的感覚・価値観があったとしている。「この文化がネアンデルタール人と現生人類でそれぞれ独立して発生した可能性は非常に低く、両者の間で接触があったはずだ」という。
研究の意義と展示
京都大学の森本直記准教授は「ネアンデルタール人や我々の祖先(かもしれない人々)の心に迫ろうとするところに(この)発掘調査の醍醐味がある。今後も調査を続け『我々は何者なのか』という問いに正面から取り組んでいきたい」とコメントしている。論文は7月6日付の米科学アカデミー紀要に掲載された。
国立科学博物館(東京都台東区上野公園)では7月14日から9月6日まで「科博NEWS展示・ネアンデルタール人と現生人類は価値観を共有していた」を開催。研究内容を解説するとともに、ネアンデルタール人の子どもの下顎骨のレプリカなどを展示し、発掘現場の様子を映像と写真で紹介している。



