筑波大学体育系准教授で脳疲労研究の第一人者である松井崇氏(博士・体育科学)は、毎朝決まった朝食を摂っている。そのメニューは、オートミールを深皿に用意し、水を注いで電子レンジで約2分加熱。そこに刻んだキャベツまたはレタス、わかめ、生卵、納豆、焼き鮭のほぐし身をすべて投入し、ぐちゃぐちゃに混ぜ合わせ、醤油で味付けした「全部入れ丼」だ。
脳疲労研究の第一人者が実践する朝食の科学的根拠
松井氏は、このメニューを「料理というより実験」と表現する。その目的は、脳と体のコンディションを最適にチューニングすることにある。松井氏は「正直、グルメ的においしいかはわかりません。しかし、脳も体も調子がいいと感じると、毎日食べていてもおいしく感じるんですよ」と語る。
この朝食のポイントは、低GI(グリセミック・インデックス)食品であるオートミールをベースに、良質なタンパク質(卵、納豆)、DHAが豊富な鮭、そして食物繊維(野菜、わかめ)を一度に摂取できる点にある。松井氏は、長時間のデスクワークや会議で脳疲労がたまりがちな現代人にとって、朝食で脳のパフォーマンスを高めることが重要だと指摘する。
朝のタンパク質摂取が脳のパフォーマンスを高めるメカニズム
松井氏によれば、脳のエネルギー源は主にブドウ糖だが、タンパク質から合成される神経伝達物質も脳機能に不可欠だ。朝にタンパク質を摂ることで、ドーパミンやノルアドレナリンなどの覚醒系神経伝達物質の材料が供給され、集中力や意欲が向上する。また、低GI食品は血糖値の急上昇を抑え、午後の眠気を防ぎ、持続的なエネルギー供給を可能にする。
松井氏は「『今日の脳』と『3年後の脳』のための食事」という考え方を提唱する。即効性のある栄養素(タンパク質、DHA)でその日のパフォーマンスを高め、長期的には低GI食による代謝改善や抗酸化作用で認知機能の低下を防ぐ狙いがある。
「風呂キャン」は脳疲労の最たるもの
松井氏は、脳疲労のサインとして「風呂キャン(お風呂に入るのを面倒に感じてキャンセルすること)」を挙げる。これは、脳が疲弊して意思決定や行動のエネルギーが低下している状態を示す。こうした状態を防ぐためにも、朝食で脳に必要な栄養を供給し、一日のスタートを切ることが重要だと強調する。
プレジデントオンラインの2026年5月の読者投票で、この記事は食生活部門の第3位にランクインした。第1位は「一日大さじ2杯弱で腸を整え老化と認知症を予防する油」、第2位は「野菜炒め定食でもからあげ定食でもない、医師がNGと言うランチの定番メニュー」だった。



