福岡県北九州市の名物駅弁「かしわめし」で知られる老舗「東筑軒」が、9期連続の赤字という厳しい経営状況から再生の兆しを見せている。事業譲渡後、新たに社長に就任した山内氏(資さん出身)が、まず手がけたのは「味を戻す」ことだった。
味の原点回帰とスタッフの増加
山内社長は、「僕が知ってるかしわめしじゃない」という従来の味への思いから、レシピの見直しに着手。昔ながらの味を取り戻すことで、顧客の支持を再び集めようとしている。その結果、事業譲渡後に120人だったスタッフは150人に増加。広報の浅田さんは「雰囲気が、ぜんぜん違うんです。明るくなりました」と語る。
社員も当初は不安だったが、事業譲渡後に店舗を増やすという予想外の展開に驚いているという。山内社長は「店をリニューアルしたり、出店したりすることで、新しいお客様が来る。やることは増えて、きつくはなります。それでもお客さんに『ありがとう』『おいしかった』と言われて、嫌なスタッフはいません。ここにも東筑軒ができたよって、自分の店が繁盛するのはうれしいはずなんです」と述べている。
駅外への出店計画と新たな顧客層
今期は5店舗、来期は7店舗の出店を予定。従来の駅構内だけでなく、駅の外への展開も積極的に進めている。取材中には、立ち食いをためらう若い女性たちの「座れる席もあるらしいよ」という声も聞かれ、これまで東筑軒に馴染みのなかった層へのアプローチが功を奏している様子がうかがえる。
駅のコンコースでは、立ち売りでかしわめしを購入する男性の姿も。2駅先の黒崎から新店に食べに来たという70歳の男性は、「昔ながらの、懐かしい味でね。お土産に買って帰る」と語り、両手に弁当の袋を提げて電車に乗り込んだ。彼は、子どもたちが小さい頃には5000円の大きなかしわめしを注文していたそうで、「私が仕事を終えて帰る頃には、かしわの部分は残っていなくて。卵と海苔の部分だけだったよ……」と懐かしそうに振り返った。
老舗の再生への道のり
105年の歴史を持つ東筑軒は、グランプリ常連の名物駅弁として知られる。しかし、9期連続の赤字に陥り、事業譲渡を余儀なくされた。新社長の山内氏は、資さん(北九州発祥のうどんチェーン)での経験を活かし、味の再現と店舗展開で再生を図る。今後も、かしわめしの伝統を守りつつ、新たな挑戦を続ける方針だ。



