105年続く老舗駅弁「東筑軒」が290円のできたてソウルフードで新展開、折尾駅の伝統と革新
105年老舗駅弁東筑軒、290円ソウルフードで新展開

福岡県北九州市の折尾駅で105年にわたり親しまれてきた老舗駅弁「東筑軒」が、新たな挑戦を始めている。従来の駅弁とは一線を画す、ロードサイドモデル1号店で提供される「できたてソウルフード」は、なんと1杯290円。グランプリ常連として知られる「かしわめし」の味を、より手軽に楽しめる形で提供し、早くも大行列を生んでいる。

290円の衝撃:老舗が初めて挑むロードサイド戦略

東筑軒の代名詞とも言える駅弁「かしわめし」は、通常970円(駅弁サイズ)。しかし、ロードサイド店では、手軽に食べられるようにサイズを小さくし、価格を290円に設定した。これは、同社が105年の歴史で初めて挑む、駅の外での新たな販売形態だ。店舗では、駅構内では行っていなかった店内調理も一部導入し、できたての温かい状態で提供する。この試みは、地元客だけでなく、観光客の間でも話題を呼び、連日長い行列ができる人気ぶりだ。

変わる街・折尾:再開発とともに歩む老舗

折尾駅周辺では、2004年から再開発が進んでいる。線路の高架化が完了し、駅北側には新しい駅舎が誕生。2028年度までには、かつての飲食店街跡地を中心に、マンションやホテル、シェアオフィスを備えた新たな駅前エリアが完成する見込みだ。この変化に合わせて、東筑軒も「駅弁から、地域の食堂へ」というスローガンを掲げ、駅の外へ積極的に進出している。一方で、駅構内の立ち売りスタイルは変わらず続けられている。

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変わらない伝統:ホームに響く「おべんとーう」の声

折尾駅のホームでは、今も東筑軒の立ち売りが行われている。66歳の小南英之さんは、13年にわたりこのスタイルを守り続ける。彼は歌うように「おべんとーう、おべんとーう。東筑軒のおべんとーう」と声を響かせ、電車が動き出すと「行ってらっしゃーい」と見送る。この光景は、ホームを行き交う人々にとって日常の一部となっている。取材中、筆者が「お弁当をひとつください」と声をかけると、小南さんは両手で弁当を掲げ深々と頭を下げ、「いらっしゃいませ。今日、一番最初のお客様です」と応えた。

冷めてもうまい「かしわめし」の真髄

購入した駅弁は、折尾駅うどん店内で飲食可能。弁当購入者には、かしわ入りのお吸い物がサービスでつく。かしわめしの小(860円)は、冷めていてもしっとりとほの甘く、錦糸卵が優しく寄り添い、海苔が味を引き締める。まさに「冷めてもうまい」と評される所以だ。この味は、多くのファンを長年にわたって魅了し続けている。

新社長の挑戦:味を戻した深いわけ

2025年11月、事業譲渡により東筑軒の新社長に就任した山内裕太氏は、まず味の復元に着手した。9期連続赤字という厳しい状況の中、山内氏は「僕が知ってるかしわめしじゃない」と感じ、伝統の味を再現することに注力。この決断が、現在の新たな展開につながっている。後編では、この半年の舞台裏について詳しく語られている。

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