「こち亀」こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の連載50年を記念した企画の第3回。浅草神社(台東区)には、作中で描かれた両さんと村瀬賢治の友情にちなんだ石碑が建てられており、毎年行われる体験学習で子どもたちに紹介されている。
石碑に刻まれた「友情はいつも宝物」
石碑は高さ約1.4メートル、幅約1.7メートルの黒御影石で、「友情はいつも宝物」という言葉が刻まれている。2005年に建立されたもので、神社の男性職員は「石碑には人を思いやる心を忘れないでほしいという願いが込められています。みなさんも、これからも友情を大切にしましょう」と子どもたちに語りかける。
夏休み終盤の8月24日には、観光客らでにぎわう境内で小学生を対象にした体験学習が行われ、参加した子どもたちは石碑を前に職員の説明に聞き入った。神社は毎年行う体験学習で石碑も案内しており、参加者は延べ約450人に上る。
ベーゴマがつなぐ友情と地域の絆
物語の中で、両さんと村瀬の友情をつなぐ鍵となったのがベーゴマだ。当時の少年たちが熱中した遊びで、相手をはじき飛ばしたり、長く回り続けたりしたら勝ち。勝てば相手のコマをもらえるルールで、何十個と持つ名人は子どもたちの憧れだった。
石碑の除幕式が行われた2005年8月、境内ではベーゴマの体験会も開かれた。参加者の一人が、埼玉県川口市のベーゴマ専門メーカー「日三鋳造所」で営業担当を務める中島茂芳さん(67)だ。中島さんは「ベーゴマで遊ぶと、あっという間に性別や年代、肩書などにかかわらず仲良くなれる。下町の中心の浅草神社で遊ぶベーゴマは一段と雰囲気もあって楽しかった」と振り返る。
作者の秋本治さんもベーゴマ好きで、こち亀には何度もベーゴマが登場する。作品が縁で、同社は葛飾区の「両さんベーゴマ大会」で記念ベーゴマを作って配るなど、つながりは深い。
タイムカプセルと聖地巡礼
物語の中で、両さんと村瀬が「この木の下にうめておくんだよ ぼくらの宝物として!」「この宝物は21世紀になったら いっしょに開けよう!」と語り合う場面にちなみ、浅草神社の木の下では2005年、全国の子どもたちから寄せられた手紙などを入れたタイムカプセルを埋める企画が行われた。2016年に掘り起こされた後も、木の下には「タイムカプセル埋蔵の碑」があり、こち亀ファンの聖地となっている。
物語で村瀬は、両さんと遊んだ少年時代を思い出し、警察に出頭することを決意する。半世紀以上にわたってベーゴマ作りを手がけてきた同社社長の辻井俊一郎さん(79)は「(両さんと村瀬のように)人と人との心をつなぐ遊びとしてベーゴマが描かれているこち亀は、私にとっても大切な存在です」と力を込める。
宮司の土師幸士さん(52)は、時にけんかしながら友人と遊ぶ少年時代の両さんに自身の幼少期を重ねてきたといい、「両さんと村瀬のように、子どもの頃の友情は心の中に残るもの。子どもたちには思いやりを持つことを学んでほしい」と話す。