明治神宮外苑の中核施設で、明治時代を伝える壁画80点を所蔵する聖徳記念絵画館(東京都新宿区)が、10月からインターネット上に「ウェブ絵画館」を開設する。これまで来館者しか触れられなかった絵の詳細情報などを発信し、館が担ってきた歴史継承のあり方を前進させる。
特別展で壁画の魅力に迫る
今月26日からは、内苑の明治神宮ミュージアム(東京都渋谷区)で、外苑創建100年を記念した特別展「聖徳記念絵画館の巨大壁画にせまる」が開催される。保存修理工事のため閉館中の絵画館に代わり、特別展の期間中は壁画が2点ずつ計6点展示される。
特別展では、製作過程を記した壁画謹製記録の草稿も一部展示される。前期に展示される壁画「富岡製糸場行啓」(画・荒井寛方)に関連して、さくら市ミュージアム-荒井寛方記念館-(栃木県さくら市)の大木礼子館長が連続レクチャーに登場する(10月8日、申し込みは終了)。
壁画に込められた先人の思い
聖徳記念絵画館の壁画は、縦約3メートルの大作で、明治天皇の生誕から大政奉還、日露戦争、崩御に至るまでの明治の歴史を一覧できる。当時の第一線の画家たちが製作に当たった。
荒井寛方は、明治6年に昭憲皇太后が富岡製糸場を行啓した様子を描くため、大正13年に現地を訪れるなど精力を注いだ。今回は製作過程がうかがえる大下図も壁画とともに展示される。大木氏は「大下図には寛方の迷いや苦悩もじかに見ることができ、壁画と見比べていただくことに大きな意義がある」と話す。
全国ネットワーク構想と今後の展望
明治神宮国際神道文化研究所の今泉宜子主任研究員は、壁画の画家ゆかりの地方の美術館や記念館と連携した情報発信や勉強会などの全国ネットワークを立ち上げ、2年後の「維新160年」に「絵画館サミット」を開きたいとの構想を明かした。
今泉氏は「歴史を継承することは絵画館の壁画に託した先人たちの思いを継ぐこと。100年までは来館者に伝えるだけだったが、100年から先はウェブ絵画館のような全国的な取り組みの中で、新しい歴史継承の仕方を模索していくことができればいいなと考えている」と語る。
80枚の壁画にはそれぞれ奉納者があり、「富岡製糸場行啓」は「大日本蚕糸会」が奉納した。明治25年創設の同会は一般財団法人として存続し、特別展に関連したワークショップでは、9月26、27両日にシルクキュレーターの林久美子氏による「繭からの糸繰り実演と体験」などを実施する。
同会の東條功副会頭は「昨年の養蚕農家数は113戸で、国内の蚕糸業は消滅の危機にあるが、国産生糸の魅力は変わらず、5世紀の雄略天皇が皇室で養蚕を勧めたという伝統もある」と説明。「これを機に多くの人に蚕糸業を知っていただき、日本の歴史的・文化的なものとしての大切さを分かってもらいたい」と期待する。
特別展は12月6日まで。展示される壁画は、前期(10月11日まで)は「王政復古」(島田墨仙)も、中期(10月17日~11月8日)は「徳川邸行幸」(木村武山)と「岩倉邸行幸」(北蓮蔵)、後期(11月14日~12月6日)は「憲法発布式」(和田英作)と「日露役奉天戦」(鹿子木孟郎)。連続レクチャーやワークショップの日程は明治神宮ミュージアム公式サイトで確認できる。



