『あなたにしか作れないけど、世界に通用してしまう 脚本の教室』(ダイヤモンド社・1980円)は、映画関連の棚に置かれながら、あらゆる人生を生きる人の手に渡っていくべき一冊だ。俳優として活動する小川あんさんが、その理由を「映画」を人生に、「脚本」を人生の物語に置き換えて読むと、一人一人の人間が尊重され、その人生が生き生きと動き出すための方法論が見えてくるからだと評する。
「あなたにしか作れない」とは「あなたにしか生きられない」こと
タイトルの前置きにある「あなたにしか作れない脚本」を書くことは、すなわち「あなたにしか生きられない人生」を生きようとすることではないか。小川さんはこの本を、自分の人生を生き生きとさせるための手引書として密かに読んでいるという。
型と個人的な感情の両立が生む物語
本書の面白さは、ハリウッド式の脚本術など世界で共有されてきた「型」を示しながら、それだけに自分を合わせることを求めない点にある。核となるのは「悲しみ」と「怒り」だ。自分が何に傷つき、何に納得できず、何を変えたいのか。個人的な感情から物語を始め、それを登場人物の欲望や葛藤へと変えていく。
型を使ってもいいし、型から外れてもいい。自分の中にあるものを物語を動かす力に変えればいい。物語の「型」を学ぶことと、自分だけの感情を手放さないことは決して矛盾せず、その両方があるからこそ、個人的な人生が他者にも届く物語になっていく。
既存の物語に居場所を見つけられない人へ
脚本は誰かに認められるためだけに書くものではない。人生と同様、自分の中にしかないものを自分の物語として立ち上げるためにある。その物語が、自分と同じように既存の物語の中に居場所を見つけられない誰かへ届くこともある。悲しみも、怒りも、あなたの人生も最初から書き直されるべき欠陥ではない。「あなたにしか作れない」という言葉は、そんな人たちの背中を力強く押してくれる。