茨城県常陸大宮市で農家パン店が開業 家族の農作物を主役に地域活性化へ
茨城県常陸大宮市の山あいにあるJR水郡線山方宿駅前で、3月17日にパン店「農家ぱん屋だいこく」がオープンします。店主は地元農家一家の末っ子である河野あゆみさんです。近隣では人口減少が進み、シャッターを閉めた店が増える中、あゆみさんは「地域の人が集う場所にしたい」との思いを胸に、家族が丹精込めて育てた農作物をふんだんに使ったパンの販売を開始します。
かつての宿場町で新たなにぎわいを創出
同市の山方地区はかつて宿場町として栄えましたが、現在は山方宿駅の1日平均乗車人員が70人余りと、行き交う人もまばらな状況です。しかし、店がプレオープンした3月5日には、パンを焼く香りに誘われるように客がひっきりなしに訪れ、駅前が久しぶりのにぎわいを見せました。
店内には「農家一家丸ごとバーガー」(税込み302円)や「香り広がる塩バターロール」(同162円)といったパンや焼き菓子が並び、午前の2時間だけで約200個が売れました。あゆみさんは「予想以上の売れ行き」と驚き、追加でパンを焼く作業に追われたといいます。
農家の末っ子が叶えたパン屋さんの夢
小学生の頃から「パン屋さんとお米屋さん」になることが夢だったというあゆみさん。県立農業大学校で農業の基礎を学んだ後、埼玉県のパン店で7年間の修業を積みました。販売や経営面の知識も得て地元に戻り、パン店の開業準備を進めてきました。
こだわったのは、家族が育てた農作物を「主役」にすることです。父・小野瀬隆一さんと母・栄子さんが作る小麦を自家製粉してパンの材料にします。具材には長兄・隆延さんが育てるネギやブロッコリー、次兄・雅俊さんのトマトを使用しています。
高齢化が進むこの地域の客層を意識して柔らかめに焼いたパンは、素材の味わいが口の中で広がるよう工夫されています。
代々続く米店を改装し家族一丸で支援
店舗は、小野瀬家が代々営む米店を改装したものです。隆一さんは「山方のきれいな水で作った農作物をパンで味わってほしい」と娘を支え、栄子さんも「今では数えるほどの店舗数になってしまった街で、皆が笑顔になれたらいい」と期待を寄せています。
店の6次産業化を支援する中小企業診断士の村上一幸さんは「経営の計画性が高く、何よりパンがおいしい」と太鼓判を押しています。
地域全体の農家の食材活用も視野に
店は17日の本格オープンに向けて試験営業を続けています。家族にとどまらず、地域の農家の食材も活用したいと構想は膨らんでいます。あゆみさんは「畑の豊かさを直接届け、農作物を手にとってもらう機会にもなれば」と意気込んでいます。
人口減少が課題となる地方において、農家が自らの農作物を加工・販売する6次産業化の取り組みは、地域活性化の重要な一手となるでしょう。家族一丸となったこの挑戦が、山方地区に新たな活気をもたらすことが期待されます。



