海水温上昇でノリ生産量半減、価格高騰が食卓を直撃
海水温の上昇による不作や魚の食害などで、ノリの生産量が大幅に落ち込んでいる。販売価格も高騰しており、関係者は対応に頭を抱えている状況だ。ノリ価格の高騰は、おにぎりなどの値上げにもつながり、消費者への影響が拡大している。
「過去にない値上がり」老舗メーカーも値上げ相次ぐ
「仕入れコストは最近4、5年で2倍になった。こんな値上がりは過去にない」。ギフト用の国産ノリを販売する山本山(東京)の担当者はため息をつく。同社は今月から焼きノリを中心に約2割の値上げを実施した。「商品の品質を下げるわけにもいかず、工夫のしようがない」と困惑の色を隠さない。
老舗メーカーの白子(東京)も昨年6月に20~36%の値上げに踏み切った。別の大手メーカーでは、「佐賀県有明産」などの産地表示を「国産」に切り替え、複数産地のノリを使えるようにして調達量を確保する動きも出ている。
海水温上昇と食害が二重苦、生産量は半減
水産庁などによると、不作の大きな原因は海水温の上昇だ。ノリの養殖は、海水温が下がる10月頃から始まるが、近年は猛暑などの影響で1か月ほど遅れて養殖期間が短くなっている。さらに、海水温上昇で活発になったクロダイなどが、ノリを食い荒らす被害も深刻化している。
全国漁連のり事業推進協議会のデータでは、2024年度(24年11月~25年10月)の国内生産量は59・4億枚(1枚=縦21センチ、横19センチ)で、01年度の106・8億枚からほぼ半減した。業者間の卸価格にあたる平均単価は、24年度に過去最高の24・1円となり、20年度の2倍超に跳ね上がっている。
「先行き不安だらけ」専門家も懸念
専門商社・小浅商事(名古屋市)の白羽洋社長は「今後も価格は下がりにくいだろう」と話す。関係者でも生産状況の見通しが読めなくなっているといい、「先行きは不安だらけだ。新たな生産地の確保など、国に支援してほしい」と訴える。
水産庁は高水温に強い品種の開発に取り組んでいるが、商業化には時間がかかる見通しだ。養殖業に詳しい近畿大学の有路昌彦教授は「環境変動が原因のため、不作を抜本的に改善するのは難しい。食害を防ぐ柵の設置など、着手できる対策を急ぐべきだ」と指摘している。
コンビニおにぎり値上げ、ノリ不使用商品も増加
コンビニにも値上げの波が押し寄せている。セブン―イレブン・ジャパンは2月10日以降、おにぎり13種を対象に、税込み11~43円の値上げを順次実施した。コメや物流コスト、包装費の高騰などが原因だが、同社はノリの価格高騰を主な理由に、昨年4月にも値上げをしている。ファミリーマートやローソンも昨春以降、おにぎりの値上げを相次ぎ発表している。
値上げによる客離れを防ごうと、各社は知恵を絞る。セブンはコメと麺を混ぜ込んだ「そばめしおむすび」を導入し、ファミマとローソンはノリを使わない商品を増やすなど、工夫を凝らしている。
チェーン店「おむすび権米衛」でも、定番の「紀州南高梅」や「和風ツナ」を160円から200円とするなど、2024~25年に値上げを実施した。色や香り、歯切れのよさにこだわって国産のノリだけを使っているという運営会社イワイ(東京)の担当者は「原材料費はここ数年じわじわ値上がりしており、消費者が離れてしまわないか心配だ」と語る。
海水温上昇という環境問題が引き起こすノリ不作は、生産者から消費者まで幅広い層に影響を与えている。持続可能な対策が急がれる中、食卓をめぐる新たな課題が浮き彫りになっている。



