8月下旬の四国水族館(宇多津町)は、プールから飛び出したイルカのジャンプに歓声が沸き、多くの観光客でにぎわった。家族で訪れた岐阜県本巣市の大学3年の女性は「岐阜には海がなく、瀬戸内海の景色がきれいで良かった」と満足げに話す。うどん店や父母ヶ浜(三豊市)を訪れ、瀬戸内海を望める丸亀市内のホテルに泊まったという。
観光客数は過去2番目、インバウンドは最多
県の観光客動態調査によると、昨年、県外から訪れた観光客の入り込み数は過去2番目の973万4000人。コロナ禍前の2019年(968万7000人)を上回り、瀬戸大橋が開通した1988年(1035万1000人)に次いだ。
顕著に増えたのがインバウンド(訪日外国人客)だ。国土交通省四国運輸局の調査では、コロナ禍が落ち着いた2023年以降、県内の外国人の延べ宿泊者数は右肩上がりで、宿泊した人数に泊まった回数を掛けて算出した数値では、25年は過去最多の113万に達した。従業員10人以上の宿泊施設に泊まった外国人に絞り、国・地域別で見ると、台湾が最も多く、中国、韓国が続いた。
課題は滞在日数の少なさ、県は周遊ツアー開始
課題は滞在日数の少なさだ。県の調査では、昨年の県外からの観光客のうち、宿泊したのは4割弱にとどまる。四国運輸局も今春に公表した報告書で、日本人の宿泊者数の伸び悩みを指摘。四国エリアの昨年の日本人延べ宿泊者数は、前年より3%少なく、関東、近畿など全国10ブロックで最少だった。
県は今年度、観光客に滞在日数を延ばしてもらおうと、県内観光地を周遊するガイド付きツアーを始める。事業に約4400万円を計上し、旅行会社に企画や運営を委託。主に高松市中心部を起点に、ワゴン型タクシーなどで中・西讃や東讃を巡る。
10月頃から旅行会社のウェブサイトなどで発売する予定で、県観光振興課の担当者は「県立アリーナ(高松市)でのコンサートを目当てに訪れた観光客らに、県内各地にも魅力的な観光資源があることをツアーで伝え、『もう一泊しよう』と思ってもらえたら」と狙いを語る。
富裕層向け高級ホテル、28年開業へ
県は富裕層の誘致も目指す。高松市と直島町で外資系高級ホテル「マンダリンオリエンタル瀬戸内」の建設が進んでおり、県は地域振興につながる民間事業を自治体が支援する「ふるさと融資」制度を適用。ホテル建設に約80億円を無利子で貸し付け、利子分を県が負担する。
ホテルは28年に開業予定で、県の担当者は「富裕層のニーズに合った体験型観光や食事の提供など、新たな観光商品を打ち出したい」と意気込む。県や関係団体は、宿泊しないと楽しめない夜間や早朝の観光コンテンツ、地域の目玉となる資源をつくることが求められる。
地方創生に詳しい香川大経済学部の古川尚幸教授(57)は四国など近隣の県と協力する必要性を指摘し、「年間を通して近隣エリア全体の宿泊者数を底上げする視点が必要だ」とする。



