トヨタ自動車とNTTは、自動運転技術の高度化に向けて、次世代通信規格「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」を活用した協業を発表した。両社は、2025年までに実証実験を開始し、2030年までの実用化を目指す。この取り組みは、交通事故の削減や物流の効率化など、社会課題の解決に貢献することが期待されている。
協業の背景と目的
自動運転の実現には、車両とインフラ間の高速・大容量・低遅延な通信が不可欠だ。現在の4Gや5Gでは、特に緊急時の応答速度や大量データの同時処理に限界がある。IOWNは、光技術をベースにした次世代通信基盤で、従来の通信と比べて遅延を100分の1、消費電力を100分の1に削減できるとされる。トヨタとNTTは、このIOWNを自動運転の基盤技術として活用することで、より安全で効率的なモビリティ社会の実現を目指す。
トヨタの豊田章男社長は「自動運転は単なる技術開発ではなく、社会全体のシステムを変えるものだ。NTTとの協業で、その実現を加速させたい」と述べている。一方、NTTの澤田純社長は「IOWNのポテンシャルを最大限に引き出し、モビリティ分野に革命を起こす」と意気込みを語った。
具体的な取り組み
両社は、まず自動運転車両と路側機(信号機やセンサー)間の通信にIOWNを適用する実証実験を、2025年までに東京都内で開始する予定だ。実験では、IOWNの超低遅延特性を活かし、車両が周囲の状況をリアルタイムで把握し、障害物を回避する技術を検証する。また、高速道路での隊列走行や、物流拠点での自動運転フォークリフトの制御など、複数のユースケースも想定されている。
さらに、両社はIOWNを活用したクラウドベースの運転支援システムも開発する。このシステムは、車両が持つセンサー情報をクラウドで集約・解析し、各車両に最適な運転指示を送る。これにより、個々の車両の処理負荷を軽減し、より高度な自動運転を実現できるとしている。
業界への影響と今後の展望
トヨタとNTTの協業は、自動運転業界に大きな影響を与えると見られる。特に、通信インフラと自動車メーカーが直接連携する事例は世界的にも珍しく、今後の業界標準を形成する可能性がある。また、IOWNの採用により、自動運転に必要なデータ通信量が現在の5Gと比べて10倍以上になると予想されており、通信事業者にとっても新たなビジネスチャンスとなる。
ただし、実用化には課題も残る。IOWNの導入には、路側機や車載通信機などのインフラ整備に多額の投資が必要だ。また、サイバーセキュリティ対策や、法規制の整備も不可欠となる。両社は、これらの課題に対しても共同で取り組む方針を示している。
自動運転の実現は、交通事故の約9割を占める人的ミスを減らし、高齢者の移動手段確保や物流の人手不足解消にもつながると期待されている。トヨタとNTTは、この協業を通じて、2030年までに自動運転のレベル4(特定条件下での完全自動運転)の実用化を目指す。



