Osaka Metro新社長・角元敬治氏「大阪への恩返し」第二章へ
Osaka Metro新社長・角元敬治氏「大阪への恩返し」第二章へ

2018年の民営化以来、初めてトップ交代を迎えたOsaka Metro。6月30日の記者会見で、代表取締役社長に就任した角元敬治氏が新体制の経営方針を発表した。金融業界から転身した同氏は、同社を「選ばれる企業」へと導く構想を描く。

「大阪への恩返し」――民営化後初のトップ交代

「日頃より当グループを支えていただいているすべての皆さまに感謝を申し上げます」。就任会見で角元氏はまず、Osaka Metro Groupを支えるステークホルダーへの感謝を述べた。民営化以降の歩みを受け継ぎ、新たな成長ステージへ進む決意を示した。

「今年度からは次なるステージ、企業としての第二章へ踏み出したものと捉えています。金融業界でもお客さまのお金を扱う責任ある業務にあたってきましたが、交通事業はお客さまの命を預かる仕事であり、その責任の重さに身が引き締まる思いです」。三井住友銀行で長年キャリアを積み、昨年から社外取締役を務めた角元氏は、社外出身の強みを「つなぐこと」と語る。「多様な企業や地域、人、事業を結び付け、新たな価値を生み出す仕事に取り組んできました。Osaka Metroの社長としても、スピード感を持って外部との連携を広げていきたい」と述べた。

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徳島県生まれの角元氏が初めて大阪を訪れたのは1970年の大阪万博。地下鉄に乗った時のまちの活気や感動は今も鮮明に残っているという。55年後に再び大阪で万博が開かれ、その翌年に社長に就任したことについて「非常に感慨深く、光栄です」と語り、「長年大阪で仕事をしてきた私にとっては大阪への恩返しという思いがあります」と胸の内を明かした。

外部連携で変えるもの、変えないもの

角元氏は同社の最大の強みとして、約100年にわたる現場力を挙げた。「地下鉄やバスを毎日、安全・安心に安定して運行することは決して当たり前ではない」とし、技術力や社員の努力を誇るべき資産と強調。一方、課題として外部との戦略的連携を挙げ、「社内の力だけでは限界がある。積極的かつ幅広く外部と連携し、新たな成長の可能性を広げることが重要」と述べた。

変えてはならない本質として「安全・安心の徹底的な追求」を最優先に挙げ、「ここが揺らげばお客さまの信頼が失われ、交通事業者としての存在基盤そのものが揺らぐ」と力説。変えるべき領域として「外部との戦略的連携」「デジタル化&データ・AI活用」「人財戦略」の三つを提示した。

外部連携は鉄道・バス事業者にとどまらず幅広い業種との協業を視野に入れ、「沿線に暮らす人々の便利さや快適さを高めるため、さまざまな人の提案やアイデアを取り入れ、新しいサービスや付加価値を生み出したい」と展望。デジタル化・AI活用については、経営への実装が企業力を左右するとし、「AIを活用して人が本来力を発揮すべき仕事へ配置し、お客さまへのサービス向上につなげたい」と述べた。将来的には運行管理やダイヤ作成、オンデマンドバスの運行最適化などへの活用も構想する。

人財戦略については「最終的に価値を生み出し、現場を守り、変革を進めるのは人」と強調。経営戦略と連動した人財育成と、一人ひとりが能力を発揮できる環境が第二章の基盤になると位置づけた。

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交通を起点に大阪のポテンシャルを引き出す

成長戦略の根底にあるのは「大阪から元気を創りつづける」という企業理念。角元氏は「交通を核にした生活まちづくり企業」として、単なる鉄道・バス運行にとどまらず、交通を起点に暮らしや都市へ新たな価値を生み出し、大阪全体の魅力向上につなげる方針を示した。「交通インフラを支えるだけでなく、周辺の生活サービスも充実させ、大阪のポテンシャルを引き出し価値を高めたい。住む人、働く人、訪れる人にとって魅力的な大阪に貢献したい」と語った。

具体策として、都市型MaaS構想「e METRO」を挙げ、「引き続き具体化を進めていく」と強調。森之宮エリアについては、大阪公立大学の新キャンパス整備などを背景に「非常に重要な開発案件」と位置づけ、建材コスト高騰や人手不足を見極めながら関係者と連携して事業を進めると説明した。また、新規開発エリアだけでなく、交通軸がカバーする全エリアに目配りし、持続可能で質の高い交通サービスを提供するほか、自動運転や空飛ぶクルマなどの最新技術も視野に入れ、最適なモビリティミックスで交通課題解決を推進する方針を示した。

「そこにあるインフラ」から「選ばれる企業」へ

会見終盤、角元氏は人口減少や少子高齢化、ライフスタイルの多様化など、交通事業を取り巻く環境変化への危機感を表明。「鉄道事業という安定した収益基盤に安住せず、緊張感を持って変化を続けなければならない」と述べた。その上で最も大切にしたい考えとして「お客さま目線」の徹底を挙げ、「お客さまにとってのベネフィットは何かという問いを常に持ち続け、それを実現していく企業でありたい」と語った。

目指す姿について、「単に当たり前にそこにあるインフラではなく、お客さまの意思で選ばれる企業へと進化しなければならない。それがこれから先、生き残っていくために重要だ」と締めくくった。「これらの変革は、社長の私が一人で進めていくものではない」と、最後まで「つなげること」を自身の役割と示した角元氏。Osaka Metroの第二章は、お客さまや地域、さまざまなパートナーとともに新たな都市の未来を描く挑戦として幕を開けた。