NIE実践指定校としての取り組み
浦和明の星女子中学・高等学校(さいたま市)は、日本新聞協会からNIE(教育に新聞を)実践指定校に認定され、昨年度から本格的な活動を開始した。同校は新聞8紙の提供を受け、校内にNIEコーナーを設置。生徒が日常的に新聞に触れられる環境を整え、様々な教科で新聞を活用する授業を展開している。
出前授業で学ぶメディアの変遷とリテラシー
今年6月5日、埼玉新聞社編集局の吉田俊一記者(埼玉県NIE推進協議会事務局長)が来校し、中学1・2年生約350人を対象に出前授業を行った。吉田記者は「家で新聞を取っている人は」と質問し、約半数が手を挙げたことに「一般的には3割です」と応じ、生徒の関心を集めた。
授業では、生成AIで作られたクマがスーパーに入る動画を例に、SNS上の偽情報やデマの危険性を指摘。「国民の9割以上がスマホを持ち、誰でも情報発信できるが、玉石混交で嘘や詐欺サイトもある」と警鐘を鳴らした。
新聞とSNSの特性比較
吉田記者は、メディアの歴史を江戸時代の瓦版からラジオ、テレビ、インターネットまで概観し、「新しいメディアが登場するたびに新聞はなくなると言われたが、共存し補完し合っている」と説明。SNSにはフィルターバブルやエコーチェンバー現象により、ユーザーが同質の情報に偏る問題がある一方、新聞は一覧性、信頼性、セレンディピティ効果(偶然の出会い)に優れると述べた。
さらに「情報があふれる中で真偽をどう見極めるか。ニュースソースは何か、根拠は示されているのか、自分の頭で考え、疑うことが大切」とメディアリテラシーの重要性を強調。後半では壁新聞作りに向けた具体的なアドバイスも行った。
授業での新聞活用事例
NIE担当の大塚徹子教諭は「以前から図書館に4紙を置いていたが、指定校になって8紙が提供され、読み比べの幅が広がった」と語る。中学2年の国語では、複数紙のコラムから好きなものを選んで書き写す課題を実施。防災の日や憲法記念日など、各紙が同じテーマを扱う日を活用し、自然と読み比べができるようにしている。
中学3年と高校1年の国語では、興味のある記事を選び、回し読みした上で意見をまとめ、新聞コンクールに応募。高校1年の理数探究基礎では論文執筆の論拠として新聞を活用。高校2年の国語では、政治学者・丸山真男の説明文を読み、具体的事象を新聞から探す授業を行っている。
批判的思考力と社会を見る目を育成
中学1年学年主任の鈴木遥菜教諭は「ネットは刺激的な表現が多いが、新聞は論理的で建設的。表現方法を学び、批判的思考力を身につけてほしい」と期待する。壁新聞作りでは、これまで生徒がまとめサイトから引用したり出典を省略したりする問題があったが、出前授業で学んだことを生かせるよう見守っている。
大塚教諭は「高校3年になれば選挙に行く年齢。真偽不明の情報に流されず、民主社会の一員として役割を果たしてほしい。8紙を並べて見比べることで、新聞社ごとに立場が異なることに気づく貴重な機会になる。社会に出たとき、自分の意見に自信を持つためにも、正しい情報源を見極められるようになってほしい」と語った。



