コロナ禍で導入されたリモートワークを縮小し、「出社回帰」に動く企業が増えている。一方、社員の多くはリモートワークの継続を望んでおり、両者の間には深い溝がある。ITエンジニアを対象にした調査では、リモートワークによって生産性が「大幅に向上すると思う」(17.9%)、「やや向上すると思う」(33.2%)と回答した人が合わせて5割を超えた。
リモートワークの効果を左右する3つの要素
企業を対象にした調査では、リモートワーク導入によってITエンジニアのエンゲージメントが「大幅に向上した」(14.8%)、「やや向上した」(55.5%)と回答した人が合わせて約7割に上る。生産性もエンゲージメントも向上するはずのリモートワークを縮小するのは、社員にとっては理解しがたいことだろう。
それでも「出社回帰」を進める企業が多いのはなぜか。筆者は2つの理由があると見ている。1つは、経営者や管理職の視点では、社員を出社させた方が生産性が上がるからだ。これは「リモートワークで生産性が上がる」という社員の主張が間違っているという意味ではない。両者で生産性を測る対象が異なっているから、議論がかみ合わないのだ。
経営側と社員側で「生産性」の定義が異なる
管理職ではない社員は、自分の仕事がいかに効率的に進むかで生産性の高低を語る。リモートワークで生産性が向上するとしたITエンジニアも、通勤で疲れない、自分のペースで集中できるといった個人の仕事の効率を念頭に回答していると思われる。
しかし経営者や管理職の立場では、会社全体やチームの業績がどれだけ上がるかで生産性を測ることになる。そうなると、どこかでトラブルやボトルネックが生じたらすぐに気付いてフォローできるよう、なるべく出社させた方が良いという判断もあり得る。まだ未熟な若手を育成するために、先輩や上司が手本を見せたり横で見守ったりできる体制が必要になることもある。
また、決められた計画や目標をクリアするだけでなく、新たなイノベーションを起こそうとするには、各自がリモートで散々と仕事をするというやり方はそぐわない。それぞれが積極的に社外に出て情報を集めたり、それを持ち帰ってディスカッションしたりする拠点として、オフィスを有効活用してほしいという考え方もあるだろう。