推し活で「搾取」されないために 資本主義下の欲望を見つめる重要性
推し活で「搾取」されないために 欲望を見つめる重要性

コンサート会場で光るサイリウム。推し活が盛んな現代、過剰なグッズ収集や際限のない課金に、資本主義社会の「負」の側面を感じる人も少なくない。ファンの情熱が企業利益のために動員されているように見えるからだ。しかし、ファン自身がそこに居場所や生きがいを見いだしているなら、安易に「搾取」と断じてよいのだろうか。

ファンの「欲望」を読み解く重要性

筑波大学助教で『ファンたちの市民社会』の著者である渡部宏樹さんは、ファン研究の第一人者だ。渡部さんは「大切なのは、当事者の中に生まれる『欲望』を丁寧に読み解くこと」だと語る。推し活における搾取の構図を単純化せず、人間の感情の複雑さに向き合う必要があるという。

渡部さんは、推し活が企業に「動員」され「搾取」されているという見方に対し、「おっしゃることはわかりますが、じゃあ搾取が全くない状態というものを想定できるかっていうと、私はないと思うんですよね」と述べる。

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原始時代から続く「感情の動員」

渡部さんは、話を単純化して原始時代の例を挙げる。「狩りでマンモスの肉を持ち帰り、宴で歌って踊り、喜びを共同体で分かち合う。狩りに行った人は命がけのリスクを取るが、宴には行かなかった人も参加し、提供された肉を食べて楽しむ。見方によっては、狩りに行かなかった人たちが、宴を楽しむために狩りに行った人を『動員』しているとも言える」

「つまり、資本主義に限らずどんな社会であっても、私たちの『楽しい』といった気持ち・感情は、何らかの形で動員や利用の対象になっていると言えませんか?」と渡部さんは問いかける。

現代の推し活と企業利益

それでも、現代の推し活にモヤモヤするのは、企業の利益追求が明確に絡んでいるからだ。渡部さんは「欲望を深めよ」と提言する。現代では、私たちの感情や欲求が資本主義のシステムと密接に結びついており、単純な搾取論では捉えきれない複雑さがあるという。

渡部さんは、ファン自身が自分の欲望と向き合い、それがどのように形成され、どのように満たされているかを理解することが、搾取に巻き込まれないための鍵だと指摘する。ファン活動を通じて得られる生きがいや居場所は、単なる消費行動を超えた価値を持つ可能性がある。

ファン研究が示す新たな視点

渡部さんの研究は、ファンと企業の関係を一方的な搾取構造として捉えるのではなく、相互作用的な関係として分析する。ファンは単に動員される存在ではなく、自らの欲望に基づいて能動的に行動する主体でもある。その視点から、推し活の光と影をバランスよく評価する必要がある。

「大切なことは、ファンの中に生まれる欲望を読み解くこと」と渡部さんは強調する。資本主義社会において、欲望そのものを否定するのではなく、それを深く見つめることで、より豊かなファン活動のあり方が見えてくるのかもしれない。

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