警察庁、匿流の通信内容分析を検討
警察庁は、深刻化する「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」による凶悪事件を未然に防ぐため、捜査対象のスマートフォンの通信内容を分析する手法の導入に向けて検討に入った。特殊詐欺などの財産被害は1日平均で約10億円に上り、「闇バイト」を実行役とする強盗は殺人事件に発展している。事件を計画段階で把握し、国民の生命・身体と財産を守る体制の構築を急ぐ。
政府関係者によると、警察庁が検討しているのは、匿流が特殊詐欺や強盗の標的とする住宅や、犯行の手段などに関する通信内容の分析。標的の情報は匿流の間で「案件」と呼ばれ、「タタキ(強盗)」「ルパン(窃盗)」などの隠語でやり取りされている。
複数グループに情報流れ、同一住宅が狙われる事例も
案件の情報は複数のグループに流されており、同じ住宅が何度も狙われる事件が起きている。栃木県上三川町の住宅で5月に起きた強盗殺人事件では、現場周辺で事件前、不審車両の目撃が相次いでいた。
こうした事態を踏まえ、政府の犯罪対策閣僚会議が28日に取りまとめた緊急対策では、犯罪組織のメンバーの通信内容を迅速に把握する法制度の導入を検討することが盛り込まれた。警察庁の具体的な手法は明らかにされていないが、事件の実行役などへの捜査で指示役らのスマホを特定し、端末の通信アプリのメッセージなどから計画内容を分析することが想定されている。
通信の秘密に配慮、重大犯罪防止に限定
通信の秘密などに関わるため、運用は重大な犯罪被害の防止に限定する。不正アクセス禁止法などに抵触しないよう、法整備も必要になるとみられる。警察庁は近く有識者検討会を設置し、諸外国の取り組みや最新技術の動向を踏まえて検討を本格化させる。
匿流による重大事件は後を絶たず、2022~23年の指示役「ルフィ」らによる一連の強盗事件後も、闇バイト強盗などの凶悪事件が各地で相次ぎ、複数の死者が出ている。
匿流は互いに面識のない人物が通信のやり取りだけで事件を計画、実行しており、実態の解明が難しい。事態がエスカレートする前に、被害を食い止める手立てが必要になっている。
犯罪捜査では、組織的な殺人や薬物・銃器事件への通信傍受や、事業者に通信記録の提供を命令できる制度がある。いずれも裁判所の令状を取得して限定的に行われており、同種の検討が行われるとみられる。



