中国のネット規制当局は、若者の間で広く使われているネットスラング「草(ツァオ)」を新たな規制対象に追加した。この表現は、不満や嘲笑、軽蔑の感情を示すものとして認識されており、当局はネット上の秩序を乱す可能性があると判断した。
「草」の意味と背景
「草」は、中国語の罵り言葉「操(ツァオ)」の代替表現として生まれた。元の言葉は性行為を連想させる粗野な表現だが、「草」はその発音が似ていることから、より穏やかな形で使われるようになった。特にSNSやオンラインゲームのチャットで頻繁に使用され、若者の間で定着している。
北京大学の言語学者、李教授(仮名)は、「この表現は単なる罵り言葉ではなく、仲間内での連帯感や軽い冗談としても機能している。規制が若者の表現の自由に与える影響は無視できない」と指摘する。
規制の詳細
中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は、2026年7月19日に新たな規制リストを公表し、「草」を含む複数のスラングを検閲対象に指定した。これにより、WeChat(微信)や微博(ウェイボー)などの主要プラットフォームでは、同表現を含む投稿が自動的に削除または非表示となる。
CACの声明によれば、「ネット上の健全な環境を維持し、低俗な表現の拡散を防ぐことが目的」とされている。違反したユーザーは、アカウント停止や罰金の対象となる可能性がある。
若者の反応
今回の規制に対し、中国の若者の間では困惑と反発の声が上がっている。北京在住の大学生、王さん(21)は、「『草』は友達との日常会話で普通に使う言葉で、悪意はない。なぜそこまで厳しく取り締まるのか理解できない」と不満を漏らす。
一方、一部の専門家は、規制の実効性に疑問を呈する。清華大学のソーシャルメディア研究者、張教授は、「若者はすぐに別の隠語を生み出すだろう。規制はいたちごっこに終わる可能性が高い」と述べている。
過去の規制事例との比較
中国当局はこれまでも、ネットスラングの規制を繰り返し行ってきた。2023年には「躺平(寝そべり)」や「内巻(競争の激化)」などの表現が規制対象となり、社会問題化した。今回の「草」の規制も、こうした流れの一環とみられる。
ただし、言語学者の間では、今回の規制が過剰であるとの見方も強い。李教授は「罵り言葉のすべてを規制するのは非現実的であり、表現の自由を過度に制限する恐れがある」と警鐘を鳴らす。
今後の影響
この規制が実際にどの程度の効果を上げるかは不透明だ。ネット上ではすでに「草」の代わりとなる新たなスラングが登場し始めており、当局とユーザーの間の駆け引きが続くと予想される。
中国のネット規制は、社会の安定を重視する政府の方針に基づいているが、若者の言語文化との摩擦は今後も続きそうだ。今回の「草」規制が、ネット上の言論空間にどのような変化をもたらすか、注目が集まっている。



