週刊少年ジャンプ33号が転売ヤーの標的に、マンガ家が感じた本の役割と不安
週刊少年ジャンプ33号 転売被害 マンガ家が語る本の価値

週刊少年ジャンプ33号が、付録の「ONE PIECEカードゲーム」限定カード「モンキー・D・ルフィ(P-159)」目当ての転売ヤーに買い占められ、本来楽しみにしていたファンや子どもたちの手に渡らない事態が発生した。特に33号で完結した「アオのハコ」のファンからは「最終回が読めない」と悲鳴が上がっている。

転売ヤーの買い占めで紙の本が届かない現実

集英社は転売対策を全くしていなかったわけではない。今号のジャンプは前号より50万部多く増刷していたほか、同社が運営する「ジャンプ+」や「ゼブラック」といった配信サービスでは、デジタル版を定期購読している人を対象に、応募者全員サービスを実施している。しかし結果的に、対策は十分に機能せず、最も大切にすべき子供やファン層に紙の本が届かなかった。

筆者は1994年に発行部数653万部を記録した「週刊少年ジャンプ」で育った、いわゆる「ジャンプっ子」だ。小学生だった当時もジャンプは爆発的人気で、いつもの書店で売り切れ、別の書店まで走った思い出もある。しかし今回の転売問題は、単なる売り切れとは次元が異なる。

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紙の本とデジタルのメリット・デメリット

前回の記事でPlayStationのディスク版ゲームソフト生産終了の話題に触れたが、筆者はゲームにおけるダウンロード版の魅力を認めつつも、物理メディアがなくなることは寂しいと書いた。これはマンガにおいても同様だ。

デジタル版には、家の中でも購入でき、スマホがあればどこでも読める、旧作から最新作までセール等を利用すれば割引価格で購入できる、といった利便性がある。また、現在書店に単行本を置いてもらっていないマンガ家の過去作品も、電子書店なら並んでいて購入してもらえる。マンガのデジタル版には、紙の本にはない魅力と利便性がたくさんある。

一方、紙の本にもデジタル版にはない魅力がある。見開きでの大ゴマの迫力や、紙のページをめくるあの感覚はデジタル版では体験できない。手元に置いておけば、デジタル版のように電子書店のサービス終了で読めなくなることもない。

集英社の緊急対策と今後の課題

集英社は7月17日、今回の件でジャンプを購入できなかったこと、書店・コンビニ店頭で混乱を招いてしまったことを謝罪し、付録カードなしの特別版(紙版)を「ジャンプキャラクターズストア」で受注販売するなどの緊急措置を発表した。声明文には「公平な購入機会を妨害するような、転売を目的とした過度な買い求めは控えて」といった内容が書かれている。また、「Vジャンプ」10月号で予定していたONE PIECEカードの付録を中止することも明らかにした。

今回のような事態が続くと、紙版の読者離れが進んだり、編集部が紙版を売るための大胆な施策を打ち出しにくくなったりする。売上が落ちれば、経営的判断として、デジタル化をさらに促進する可能性もある。だから筆者は、物理メディアの寿命を縮めかねない転売ヤーの行為が許せないのである。

今後もマンガのデジタル化は進んでいくと思うが、それでも一人のマンガ家として、筆者は紙の本がなくなってほしくないと思っている。むしろ過渡期だからこそ、両方のメリットが享受できる今は貴重で、手間やコストをかけてそれらを提供してくれる出版社はありがたい存在だ。転売ヤーの行為が、紙の本の未来を奪うことのないよう願う。

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