オーストラリア連邦議会は11月28日、16歳未満の子どもによるソーシャルメディア(SNS)の利用を禁止する世界初の法律を可決した。この法律は、TikTok、Instagram、Snapchatなど主要なSNSプラットフォームを対象としており、違反した企業には最大4950万豪ドル(約50億円)の罰金が科せられる。
法案の概要と成立までの経緯
この法律は、アンソニー・アルバニージー首相率いる労働党政権が推進したもので、超党派の支持を得て可決された。アルバニージー首相は「ソーシャルメディアは子どもたちに害を及ぼしている。私たちは彼らを守るために行動を起こす」と述べ、法案成立の意義を強調した。
法案は上院で34対19、下院で102対13の賛成多数で可決。与党・労働党だけでなく、野党・自由党も支持に回った。一部の小政党や独立系議員は表現の自由やプライバシー侵害の懸念から反対したが、大勢には影響しなかった。
対象となるプラットフォームと罰則
法律の対象となるのは、TikTok、Instagram、Snapchat、Facebook、X(旧Twitter)、Redditなど、年齢確認が困難とされる主要なSNSプラットフォーム。一方、教育目的のYouTubeや、メッセージングアプリのWhatsApp、ゲームプラットフォームのRobloxなどは対象外とされた。
プラットフォーム事業者は、16歳未満の利用を防止するための「合理的な措置」を講じる義務を負う。違反した場合、最大4950万豪ドルの罰金が科せられる。ただし、未成年者本人やその保護者が罰則の対象となることはない。
施行までの猶予期間と今後の課題
法律は成立したものの、実際の施行は12か月後となる。政府はこの猶予期間中に、年齢確認技術の実証実験など、具体的な実施方法を詰める方針だ。ミシェル・ローランド通信相は「プラットフォーム事業者には、子どもの安全を守る責任がある。この法律はその責任を法的に明確化するものだ」と述べた。
しかし、専門家からは実効性への疑問も上がっている。年齢確認技術にはプライバシー侵害のリスクがあり、完璧なシステムの構築は困難との指摘だ。また、VPNなどの迂回手段を使えば簡単に規制を逃れられる可能性もある。
世界的な波紋と他国への影響
オーストラリアのこの法律は、世界各国に大きな波紋を広げている。英国やフランス、ドイツなどでも同様の規制を検討する動きがあるが、オーストラリアが世界で初めて法制化に踏み切った形だ。一方で、表現の自由や子どもの権利を守る立場から、過度な規制を懸念する声も根強い。
アルバニージー首相は「これは世界が注目する実験だ」と述べ、他国への波及効果に期待を示した。しかし、実際の運用には多くの課題が残されており、今後の動向が注目される。



