米ニュージャージー州ホーボーケンでアパート探しをしていた38歳のグラフィックデザイナー、クリストファー・マクファーレン氏は、不動産サイト「Zillow」に掲載されていたある物件に胸を躍らせた。窓からはたっぷりと自然光が差し込み、部屋全体が温かな雰囲気に包まれていた。室内は広々として見え、内装もセンスよく整えられていた。
「現地に着いて、本当に衝撃を受けました」と、マクファーレン氏は振り返る。
クイーンサイズのベッドが、寝室のほとんどを占めていた。書斎とされていた部屋も、実際には机を置いたクローゼットのような狭さだった。明るさも写真ほどではなかった。
AI加工された不動産広告の広がり
彼が直面したのは、賃貸や住宅購入を検討する人たちの間で広がる新たな悩みだった。人工知能(AI)で加工された不動産広告だ。掲載写真をオープンAIの検証ツールにかけたところ、画像がAIで生成されたことが確認された。
物件を案内した不動産仲介業者ジェフ・ラドリン氏は、AIの使用を弁解する。部屋を実際より広く見せたのではなく、きれいに見せたのだという。前の入居者がまだ住んでいたためだ。
「散らかったままの部屋の写真を使っていたら、(実際に来た人の)半数はわざわざ内見に来なかっただろう」と、ラドリン氏はメールで説明した。
規制の動きと業界の課題
マクファーレン氏によると、これまで実際に内見した物件のうち、かなりの数でAIによって加工された写真が使われていた。浴室の設備やキッチンの戸棚、暖炉などが実物と違って見えたという。
マクファーレン氏は言う。「AIは規制されるべきだ。時間を無駄にするだけでなく、虚偽広告でもある」
不動産業者は長年、家具を配置した際の空間イメージを買い手に伝えるために「バーチャルステージング」を利用してきた。しかし、AIを活用した「不動産写真のレタッチ(画像修正)」は、今やあまりに巧妙かつ広範囲に行われるようになったため、一部の州や都市では規制に乗り出している。