AI生成メールのクリック率は人間と同等、年1回のセキュリティ教育では防御困難に
AI生成メールのクリック率は人間と同等、年1回の教育では不十分

セキュリティ企業のAdaptive Securityは2026年7月15日(現地時間)、生成AIの急速な普及によりメールを悪用したサイバー攻撃の構造が大きく変化し、従来型のメールセキュリティ対策だけでは防御が困難になっているとの見解を発表した。

AIによる攻撃の高度化

同社は、2025~2026年にかけてのメールセキュリティの主要トレンドとして、AIによるフィッシングやビジネスメール詐欺、ディープフェイク、Phishing-as-a-Service(PhaaS)、新たな攻撃手法の拡大、人間を対象とした防御の重要性を挙げた。

生成AIは自然な文法で個人ごとに最適化されたフィッシングメールを短時間かつ低コストで大量生成できるようにし、攻撃者はオープンソース・インテリジェンス(OSINT)を活用して役職や取引先、業務内容を反映した精巧な標的型攻撃を展開している。研究ではAIが生成したスピアフィッシングメールのクリック率は人間が作成したものと同等で、従来型のフィッシングを大きく上回る結果が示された。

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ビジネスメール詐欺と多様化

メールは依然として脅威の主要な侵入経路であり、ビジネスメール詐欺は最も大きな金銭被害を生む脅威と位置付けられる。経営陣や取引先になりすました攻撃者が送金や認証情報の提供を促し、悪意のある添付ファイルやリンクを含まないケースが多く、従来のメールゲートウェイやシグネチャベースの検知を回避しやすい。攻撃は送金依頼や給与振込先変更、請求書詐欺、ベンダーなりすましなど多様化し、季節や業務イベントに応じて手口も変化している。

メールを起点に、AI音声やディープフェイク動画を組み合わせる多段階攻撃も拡大している。攻撃者はメールで信頼関係を構築した後、音声通話やビデオ会議で経営幹部や取引先になりすまし、送金を承認させる。Adaptive Securityは、感覚的な本人確認ではなく、事前に定めた検証手順を徹底する必要があると指摘する。

新たな攻撃手法と多層防御の必要性

攻撃手法も高度化しており、QRコードを利用した「クイッシング」、CAPTCHAを悪用した検知回避、SVGファイルやカレンダー招待ファイルを使った誘導、Adversary-in-The-Middle(AiTM)攻撃などが増加している。これらは従来のURL検査や添付ファイル検査を回避しやすく、多要素認証(MFA)を利用していてもセッショントークンを盗み取ることで不正アクセスを実現するケースがある。

攻撃基盤の商用化も進み、PhaaSでは専門知識がなくても高度なフィッシング基盤をサブスクリプション形式で利用できる。法執行機関による摘発は一定の効果を上げているものの、攻撃基盤は短期間で再構築されるため、根本的な脅威の解消には至っていない。

技術的対策としては、SPFやDKIM、DMARCによるメール認証の運用が重要になるが、一方で正規アカウントの乗っ取りや類似ドメイン、表示名の偽装には対応できない。AIを活用した行動分析型検知やAPIベースのメール保護、フィッシング耐性を持つ認証方式などを組み合わせた多層防御が求められるとしている。

人的リスク管理の重要性

組織内部からの情報漏えいも重要な課題であり、誤送信や添付ミス、不適切な宛先指定などの人的ミスはEUの一般データ保護規則(GDPR)や改正ネットワークおよび情報システム指令(NIS2)、米国の医療情報保護法(HIPAA)など各種規制への対応にも直結する。こうしたリスクは、従業員が多忙な状況で発生しやすく、単発の教育では十分な改善が期待できない。

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同社は、AI時代には年1回のセキュリティ教育では攻撃の進化に対応できず、職種別・役割別に最適化した継続的なフィッシング訓練や、メールだけでなく音声・SMSを含むマルチチャネル演習、人間の行動変化を継続的に測定する「ヒューマンリスク管理」が重要になると結論付けている。技術的な対策と人間の判断力を組み合わせ、継続的なシミュレーションとリスク評価によって組織全体の防御力を高めることが、AI時代のメールセキュリティの中核になるとしている。