テレビやスマートフォンの画面に使われる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の心臓部となる発光材料は、25~40年前に登場したものが主流となっている。ここに挑もうとしているのが、「第3世代」とも呼ばれる日本発の技術だ。
ノーベル賞級の研究者が語る未来
ノーベル賞級の研究者を独自に選ぶ「クラリベイト引用栄誉賞」。9月に開かれた発表会見で、第3世代を開発した九州大の安達千波矢(ちはや)主幹教授が登壇し、こう語った。
「未来のエレクトロニクスを開拓したい。その先端のディスプレー(画面)と省エネルギーを実現する分子の開発に成功した」
有機ELの二つのルート
有機ELは、電気のエネルギーを光に換える有機物を使い、赤・緑・青の光の三原色をつくって映像や照明にする技術だ。電気エネルギーが光に変換されるルートは二つあり、それぞれから出る光は「蛍光」と「リン光」と呼ばれる。原理的に、投入されたエネルギーの25%は蛍光のルートに、残りの75%はリン光のルートに流れる。
1980年代後半に開発された「第1世代」は蛍光しか使えない。リン光側のエネルギーは光るのに時間がかかり、熱として失われる。そのため、発光効率(内部量子効率)は25%止まりだった。
第3世代がもたらす変革
2000年前後に登場した「第2世代」は、エネルギーをリン光ルートに集め、すばやく光らせることで効率100%を達成した。二つのルート間に坂道をつくるような工夫が必要で、レアメタル「イリジウム」の特性がこれを可能にした。それは同時に、希少で高価なイリジウムが不可欠という課題を生んだ。
これを解決したのが、安達さんが12年に発表した「第3世代」だ。有機物の分子構造を工夫することで、効率100%を実現し、イリジウムに頼らない発光材料を可能にした。