ナス農園のDX挑戦、従業員2減でも残業ほぼゼロ、賃金アップ
ナス農園のDX挑戦、残業ほぼゼロで賃金アップ

高知県安芸市の農業法人「分ち合ふ農園」が、ハウス栽培のナスの収穫や栽培管理を経験や勘に頼らず、具体的な情報に基づく指示で効率化と技能向上を図るため、基本ソフトウェア(OS)を自社開発した。昨年12月から運用を開始し、春の残業はほぼゼロ、賃金アップにつながった。社長の宮崎武士さん(45)は「DX(デジタルトランスフォーメーション)化で、耕作放棄地やハウスの再生につなげたい」と意欲を見せる。

就農から法人化、収量は16トンから25トンへ

宮崎さんは元大手運送会社社員で、2009年に就農し、2024年に法人化。2025年度(昨年8月~今年6月)の作付面積は、後継者難で引き継いだハウスを含め5棟(73アール)。法人化前から、ハウス内の温湿度やCO2濃度の測定、出荷情報などを提供する県の営農支援クラウド「SAWACHI」(サワチ)を活用し、1反(10アール)の収量を16トンから25トンに増やした。しかし、長時間労働と体力という壁に直面した。

人を雇う新たな壁、数字で示す評価の重要性

解決のため人を雇うと、新たな壁に直面した。未経験者が理解しやすいのは、指示が具体的であること。以前、熱心な青年の働きに報いようと基本給とボーナスを上げたが、成果を数字で示さなかったため、「何を評価してなんですか。社長の裁量ですか」と辞めてしまった。宮崎さんは就農当初、義父に「今日のナス、どう思う」と問われたときの戸惑いを思い出し、「数字を示さないと従業員の技能向上どころか、雇用維持もおぼつかない」と痛感したという。

自社開発OSで作業データを一元管理

開発したOSは、ハウス内での作業データや取引先からの注文数、出荷準備の進み具合などを一元管理。従業員はスマートウォッチを身に着け、畝(45~25メートル)ごとの予測収量と実際の収量、所要時間を入力する。スマートフォンのアプリには、電熱ばさみやナスを運ぶ台車など機材の不具合、作業で気付いた要改善点を入力する。OS開発の約280万円は、高知労働局の業務改善助成金を充てた。

残業ほぼゼロ、賃金アップ、今後の展望

今年3~5月の従業員は7人。前年同期比で2人減だが、残業はほぼゼロ。「残業して稼ぎたい」との声もあったが、「時給アップで応える。早く終われば、翌日の準備に充ててほしい」と、個々の「働き方改革」も促す。9反に広げた今期も、「7人でやっていける」と自信を見せる。今後は収集したデータを生かし、各従業員の効率のいい働き方をAIに提案させる。宮崎さんは「耕作放棄地の解消と事業拡大を目指す仲間にも使ってほしい」と呼びかけ、「家族経営の農家は人件費も労働時間も無視した丼勘定になりがち。このOSを使えばキャッシュフローが明確になり、金融機関からの信用も増す」と話している。