焦げ茶色の但馬牛に白黒の縦じまのコートをまとわせると、シマウマのような見た目になった。数人が取り囲んで、丈の具合や着脱のしやすさをチェックする。7月下旬、肉牛産地である兵庫県丹波市での取材で目にした光景だ。
サシバエ被害を減らす「しま牛コート」
牛にシマウマ柄のペイントを施すと吸血昆虫サシバエの被害が半減するという論文が発表されたのは2019年。しま柄を吸血昆虫が避けるという海外の先行研究を実証したものだ。しまの幅が5センチ未満だと、サシバエは接近したときに明暗の変化で目測を誤り、うまく体表に着地できなくなるという説があるが、メカニズムはまだ解明されていない。
開発企業が試作品を改良
「しま牛コート」の試作品を確認するのは、開発企業「寿ニット」の松田代表取締役(右端)。丈を長くするなどの改良を進めている。
研究に取り組んだ農業・食品産業技術総合研究機構の主任研究員、児嶋朋貴さん(42)=当時は愛知県農業総合試験場=らのグループは論文発表から6年後の昨年、イグ・ノーベル賞生物学賞を受賞。しましま黒毛和牛の写真とともに世界的な話題になった。
試験販売は売り切れ
試験販売された成牛用200着は売り切れたという。イグ・ノーベル賞の選考基準は、思わず笑ってしまう奇想天外な科学研究に贈られるもの。創設から35年。この賞のポイントは、笑った後に「何かを考えさせる」部分にある。受賞研究には、それぞれに物語がある。



