高級腕時計の代名詞であるロレックス。コロナ禍の2022~2023年には中古市場で価格が急騰し、「ロレックスバブル」と呼ばれる過熱ぶりを見せた。では、その熱狂は今どうなっているのか。ブランド時計・ジュエリーのBtoB取引を手がけるJUNIORのOURO事業部・辻野雄弥部長に、ロレックス中古市場の現在地と今後の見通しを聞いた。
ロレックスバブルは弾けた?現在地を探る
辻野氏は「当時のバブル自体は終わっている」と断言する。コロナ禍では世界的な金融緩和により余剰資金が時計や車などの高級商材に流れ、ロレックスだけでなくオーデマ ピゲやパテック フィリップなどの超高級時計も含めて全体的に相場が大きく上昇した。その後、景気の落ち着きと供給増加により市場は調整局面に入ったが、バブル前に完全に戻ったわけではない。
「時計は『身につけられる実物資産』として認識されるようになり、その価値観が定着したのは大きな変化です。実際、コロナ禍のピーク価格に近づいているモデルや、当時の最高値を超えているモデルもあります。以前とは違ったかたちで、成熟しながら成長している市場だと感じています」と辻野氏は語る。
投機目的の減少と「好き」に基づく購入
バブル期には短期的な値上がりを狙う投機目的の購入者が多かったが、相場の落ち着きとともに減少。現在は「本当に時計が好きな人」が残っている印象だという。「今買われている方は、『このモデルが好き』『ずっと憧れていた』という動機の人が多い。ただ、純粋な時計好きの方でも資産性を意識するようになりました。頭の片隅に『リセールバリューはどうなんだろう?』という考えも併せ持つイメージです」
現在のマーケットは「好き」が結果として投資に繋がる健全な状態に戻ってきており、目先の利益ではなく憧れの時計を愛用し、役目を終えたら次のモデルへの買い替え資金にする「コレクション投資」というスタイルが一般的になりつつある。
ロレックスが特別な存在であり続ける理由
ロレックスが他ブランドと一線を画す理由について、辻野氏はまず「圧倒的な流動性」を挙げる。「ロレックスは世界中に凄まじい数が流通しています。弊社でも年間4万件以上の取引データを保有していますが、これほどエビデンスが取りやすいブランドは他にありません。どこへ持っていってもすぐに現金化できる安心感があり、投資対象としても非常に魅力的です」
さらに「単純にめちゃくちゃかっこいい」という点も強調。男性でも女性でも、ロレックスを自然に着けこなしている人は魅力的に見えると語る。
「買い時」はいつか?プロが教える後悔しない選び方
「今、ロレックスは買い時なのか?」という問いに対し、辻野氏は「投資的な意味で買い時を掴もうとするのは非常に難しい。為替の影響や地政学的リスクで相場が上下するからです。なので、『好き』を先行させてほしい」とアドバイスする。
「自分にとって最高の1本を徹底的に調べて惚れ込んで買う。株やFXのように毎日チャートを見て一喜一憂するより、好きな時計を身につけて1年なり数年なり楽しむ。満足して手放すときに、結果として資産価値が付いてくる場合がある。これが時計投資で一番成功するパターンです」
これまでの経験上、リーマンショックやコロナ禍、地政学リスクなど大きな経済インパクトは何度もあったが、結局「今が一番相場は高い」という。本当に時計が好きな人は不思議といいモデルを選び、結果的にいいタイミングで手放せているという。
注目すべきモデルと人気の傾向
現在の定番はデイトナ。唯一のクロノグラフモデルで、歴史やストーリー性も含めて圧倒的な人気を誇る。GMTマスターIIやサブマリーナも安定して人気で、特にGMTマスターIIはデザイン性が高く海外需要も非常に強い。
地域による需要の差も顕著で、アメリカのような体格の良い方が多い市場では41mmのデイトジャストや金無垢モデルが強い。一方、日本やヨーロッパでは肌の色やファッションに馴染みやすいシルバーや黒の、少し小ぶりなモデルが好まれる傾向にある。
メーカー認定中古の影響と市場の未来
ロレックス公式が「ロレックス認定中古」を導入したことについて、辻野氏は「市場全体への影響は限定的」と見る。メーカーが真贋やコンディションを保証する安心感は新しいユーザー層を呼び込み、市場全体の信頼性向上につながる一方、中古時計の価格は世界中の卸売市場やオークションなど二次流通市場の取引によって形成されており、価格形成においては民間の流通市場が引き続き大きな役割を担うと予想する。
時計という「第三の資産」が描く未来
長期的には市場はさらに拡大していくと辻野氏は見込む。「コロナ禍後のバブルを誰も予想できなかったように、10年、20年というスパンで見ればまた想像もつかないような高騰が起きる可能性もあります。時間が知りたければスマホを見ればいい時代に、数百年前と同じ機械式時計が支持されるのは、時計が単なる道具ではなく、ファッションであり工芸品でもあるからです」
「今持っているモデルが30年後にはヴィンテージとしてさらに価値を高めているかもしれない。そう考えると、今の自分が本当に好きなものを大事に使うことが、結果的に一番いい未来に繋がるのではないかと思います」と締めくくった。



