創刊45周年を迎えた科学雑誌Newton。その魅力の一つが、美しく大胆なイラストだ。難しい話を直感的に理解する助けとなり、見えない世界をも可視化する。科学の話をイラスト化する大変さや楽しさとは?編集部のイラストレーター、入社20年目の吉増麻里子さんと14年目の渡邊妥翁子さんに話を聞いた。
イラストレーターへの道
吉増さんは美大で油絵を専攻し、大学院修士課程を修了。就職先を探す中で、たまたまNewton編集部のイラストレーター募集の求人を見つけたという。応募前に同誌を数冊購入してみると、かなり描き込まれた絵が載っていて驚いたそうだ。
渡邊さんも吉増さんと大学の同期で、大学院博士課程まで進み、博士号を取得。絵にまつわるアルバイトをしながら作品制作で生計を立てようと考えていたが、3年ほどで生活が難しいと気づき、吉増さんからNewtonのイラストレーター募集を聞いて入社した。
編集者とのやり取りと分野ごとの難しさ
特集を担当する編集者から、イラストレーター全員に対して特集の内容や必要なイラストの概要が説明され、その後仕事が割り振られる。発注方法は編集者によって異なり、絵コンテを渡す人もいれば、ポイントをまとめた指示書を渡す人もいるという。
イラスト制作の難しさについて、吉増さんは直近では2026年7月号に掲載された緑内障治療のイラストを挙げる。わずか1ミリ未満の極小のステント(治療用の管)を目の中に置く治療法で、細かすぎて画像資料がほとんどなく、編集者と密に相談しながら仕上げたという。「たぶん、ここまでクローズアップした図は、なかなかないと思います」と話す。
「無」や「真空崩壊」の表現
医療系のイラストは正確さが求められる難しさがある一方、物理系はイメージをイラスト化する難しさがあると吉増さんは説明する。「真空崩壊」がテーマの際は「地球が爆発する感じ」という発注があり、宇宙の大規模構造については「シャボン玉の表面に宇宙が張り付いているイメージで」といった指示があったという。分野によって工夫のしどころが異なる。
Newtonと言えば表紙のインパクトも有名だが、その制作過程には科学的な正確さと芸術的な表現の両立という難しい課題がある。イラストレーターたちは編集者との密な連携のもと、見えない世界を可視化する仕事に取り組んでいる。