「なんちゃって制服」がZ世代に定着、原宿のセレクトショップが示す新たな価値
なんちゃって制服がZ世代に定着、原宿のセレクトショップが示す新たな価値

かつては学生だけが着るもの、あるいは卒業後はコスプレと捉えられがちだった制服。近年、Z世代を中心に「なんちゃって制服」が私服と制服の中間ファッションとして定着しつつある。2016年に東京・原宿にオープンした制服のセレクトショップ「KANKO SHOP Select Square」では、現役生のみならず20代の“青春の延長線”としての利用から、さらに上の大人層、外国人観光客にまで客層が広がっている。世代間のギャップを越えて広がる制服の新たな価値とは。令和の制服事情について掘り下げる。

自由制服専門のセレクトショップ、原宿と舞浜の2店舗

「KANKO SHOP Select Square」は、関東エリアに多い自由制服制の学校に通う生徒に向け、地域に密着して自由制服を提案するフラッグシップストアとして、2016年に原宿でオープンした。トレンドの発信地に店舗を構えることで、10代の生の意見を聞き、商品開発に生かす狙いもあった。通常のカンコーショップは全国にあるが、自由制服専門のセレクトショップとしては、現在は東京・原宿と千葉・舞浜の2店舗のみだ。

オープン当初の販売ターゲットは中高校生がメインだった。しかし、レンタル事業を始めてから一気に客層が広がり、高校を卒業した大学生から20代の方にも借りていただけるようになった。さらに、会社の余興やイベントで使用するために、大人の方が利用されるケースもあるという。

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大人の私服としても購入、チェック柄スカートや無地ニットが人気

制服ファッションが好きな大人の方は一定数いる。特にチェック柄のスカートや無地のニットは、私服のコーディネートにも合わせやすいため、大人の方が普段着として購入されるケースもある。もちろん、外国人観光客にご購入いただく機会も増えている。

レンタル利用の年齢について、実店舗のボリュームゾーンは高校生から20代半ばだ。20代後半の方もいるし、海外からのお客さまの中には、年齢を気にせずレンタルを楽しまれる方も多い。オンラインでのレンタルも含めると、40代の方にもご利用いただき、年代の幅は非常に広い。

舞浜出店はテーマパーク需要、推し活やお揃いコーデも

舞浜への出店は、テーマパーク利用が多いからだ。当初レンタル事業は原宿店だけだったが、お客さまの多くが「テーマパークに着て行く」と聞き、アクセスの良い舞浜への出店を決めた。最近は、ライブなどの「推し活」イベントや、友達とお揃いコーデで遊ぶためなど、用途も多様化している。外国人観光客の中には「アニメの影響で学ランや日本のJKの制服を着てみたかった」とレンタルされ、そのまま観光へ行かれる方もいる。利用者の8〜9割は女性で男性のみの来店は少ないが、カップルで来店し、お揃いの制服を着るというケースも結構ある。

「なんちゃって制服」が市民権を得た背景

かつて高校卒業後の制服着用はコスプレと捉えられていたが、Z世代を中心に心理的ハードルは確実に下がっている。コロナ禍で青春の思い出作りが満足にできなかった方や、新しくできたパートナーとお揃いで制服デートをしてみたい方、自分の学校の制服が可愛くなかったなど、理由はさまざまだ。また、ハイブランドでもスクールルック(制服風スタイル)のアイテムが展開されている。学校指定の制服ではなく、いわゆる「なんちゃって制服」が私服と制服の中間ファッションとして定着したことも抵抗感を減らしている。

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「なんちゃって制服」を楽しめる年齢の境界線は、ボリュームゾーンである10代〜20代半ばでひと区切りあるという印象だが、それより上の方もオンラインショップ等でレンタルする方がたくさんいる。実際、さまざまな世代の方にも楽しんでもらえるように、大人向けの企画もスタートさせている。

K-POPアイドルやハイブランドの影響、集団心理も

卒業後に制服を楽しむ風潮が増えたきっかけは、K-POPアイドルによる韓国風制服の流行が大きかった。ただ、ハイブランドでもトラッドやプレッピーといった制服風スタイルは定期的に提案されており、ファッションとしてのベースは昔から存在していた。また、「友達と一緒なら恥ずかしくない」という集団心理も影響している。街中で着るのには少しハードルが高くても、テーマパークという特別な空間なら一歩を踏み出せるという集団心理がある。20代の利用者はコスプレというより、青春の延長線上として自然に楽しんでいるようだ。

大人世代の制服願望、純粋な憧れから普段着に

大人層は定番のブレザースタイルが人気だ。20代の方には「これならまだ現役に見える、浮かないかな」という意味合いが大きく、中高校生が持つ「制服=青春の象徴」というイメージに自分の思い出を寄せにいっている部分もある。王道スタイルを選びつつ、当時着られなかった流行のカーディガンやリボンを合わせてアレンジを楽しんでいる。

40代以上の世代にとって制服は「卒業したら着てはいけないもの」という意識があり、かつては性的趣向のイメージと結びつくネガティブな時代背景もあった。しかし、店舗では利用の制限や線引きはしていない。実際、40代・50代の大人世代で制服を借りられるお客さまもいらっしゃる。年齢・性別の壁を気にせず、「当時着たくても着られなかった」「一度着てみたかった」という純粋な思いで、好きなものを自由に選んで楽しんでいただけるスタンスを大切にしている。

「制服=学生のもの」という固定概念は今でも残っているが、そのベースがあるからこそ、あえて大人がファッションとして楽しむことへと広がったのではないか。また、“みんなでお揃いにする楽しさ”は、私服ではなかなか味わえない制服ならではの魅力だ。

韓国カルチャーの影響と日本の若者の意識

ファッションとしての制服の流行において、韓国カルチャーの影響は注目度が非常に高かった。当店でも韓国風のタイトなジャケットやシャツ、スカートを展開したが、同じように作って売れるかというと、そうではなかった。韓国風制服の魅力である“タイトでスタイルを強調するデザイン”に対し、日本の若者は「体型をそこまで露骨に出したくない」という意識が根強く、購入して何度も着るまでには至らなかった。一方、それまでの日本の伝統的な制服にはなかった鮮やかなイエローや主張の強いブラウン系など、全体のシルエットやカラー面ではトレンドとして影響を受けた。

最新トレンドは平成レトロ、エンジ色のカーディガンが人気

近年の制服トレンドは、平成レトロブームにより、ルーズソックスや合皮のスクールバッグ、ベージュのカーディガンなどが一周回って「エモい価値」として受け入れられている。ここ2年ほどは「エンジ色のカーディガン」に人気が集中している。大きめのカーディガンをダボッと羽織り、スカートの丈を調整し、足元にルーズソックスを合わせるのが最新トレンドだ。

大人向けに提案された「チェック柄のロングスカート」の反響は、私服として完全に成立し、狙い通り大人の方が購入している。学生服と同じクオリティの生地を使っているためプリーツの保持性が圧倒的に高く、洗濯機で丸洗いしても型崩れしない。学校指定にはない明るいカラーも多いため、制服感を一切出さずに、質の良い普段着として使っていただける。

今後、制服の価値はより自由に

世代間の制服に対するギャップや風潮の変化について、担当者は「私自身も40代ですが、Z世代が違和感なく制服をファッションとして着こなしている姿には、時代の変化を強く感じます。その楽しそうな姿に影響されて、大人世代が持つ卒業後の制服着用へのネガティブな意識も薄れてきているように感じます。将来的に、制服の持つ価値がもっと自由に定着していけばいいなと思っています」と語る。

学生服は3年間毎日激しく動いても傷まないよう、一般のアパレル製品に比べて耐久性や縫製技術が格段に優れている。今後はその最大の強みを活かし、『学校へ着ていく服』にとどまらず、中高生はもちろん、幅広い世代に私服や一般アパレルとしても長く愛用してもらえる上質な服を提案していきたいとしている。