2026年6月18日に発売された日産自動車の新型「キックス」は、SNS上でおおむね好評だ。だが、気になるのは実際に売れるかどうか。今回は、競合するコンパクトSUVと比較し、その実力を検証する。
先代モデルは苦戦、新型で巻き返しなるか
新型キックスが属するコンパクトSUVは、日本市場で急成長中のカテゴリーだ。日産の発表によると、2025年に日本で最も売れた車種はSUVであり、その半数以上(約52万台)をコンパクトSUVが占める。しかし、先代キックスはこの市場で苦戦を強いられた。トヨタ「ヤリスクロス」、ホンダ「ヴェゼル」といった強力なライバルに対し、2025年の登録台数はヴェゼルの約6.7万台に対し、キックスは1万台にも満たなかった。スズキ「ジムニーシエラ/ノマド」やホンダ「WR-V」にも及ばない状況だった。
新型キックスは、ボディサイズを拡大し、ヴェゼルと同等に。全長は約4,210mm、全幅約1,765mm、全高約1,590mmで、ホイールベースも延長された。身長170cmの筆者が後席に座っても余裕があり、室内空間はヴェゼルに匹敵する。ヤリスクロスは先代キックスよりさらに小柄で、スペースでは譲らざるを得ない。
デザインとパワートレイン:e-POWER第3世代の進化
スタイリングは、アメフトのヘルメットをモチーフにしたフロントマスクが特徴的で、SUVに求められる力強さをアピール。新型ならではの新鮮さがあり、デザインで選ぶユーザーも少なくないだろう。
パワーユニットは、エンジンで発電しモーターで走るハイブリッドシステム「e-POWER」の第3世代を搭載。先代の1.2リッターから、発電専用の1.4リッター直列3気筒エンジンに変更し、高速域での燃費を改善した。カタログ燃費は25.7km/L(WLTCモード)で、ヴェゼルの26.0km/Lに迫る。一方、ヤリスクロスは30km/Lを超えるモデルもあるが、トヨタのハイブリッドシステムは市街地の急加速時にエンジン音が気になることがある。
フロントモーターの最大トルクは、新型キックスが315Nm、ヴェゼルが253Nm、ヤリスクロスが141Nm。キックスはモーター駆動主体のため、十分なトルクを確保し、滑らかな加速を実現する。さらに、第3世代e-POWERの「5-in-1」モジュール(モーター、インバーター、減速機、発電機、増速機を一体化)が、スムーズな走りに貢献している。
4WDシステム:e-4ORCEの優位性
4WDシステムも異なる。新型キックスとヤリスクロスは後輪をモーターで駆動する電動4WDだが、ヴェゼルはメカニカル4WD。キックスはさらに、4輪を電子制御する「e-4ORCE」を採用。リアモーターの最大トルクは140Nmで、ヤリスクロスの52Nmの約3倍だ。e-4ORCEはモーターとブレーキを統合制御し、加減速時の前後方向の揺れを抑え、気持ち良いコーナリングを実現する。筆者は「アリア」や「エクストレイル」でその効果を体感済みで、コンパクトSUVへの搭載は驚きだ。日産の本気度がうかがえる。
プラットフォーム:CMF-Bがもたらす走りの質
新型キックスはプラットフォームを一新。先代が新興国向けの「V」プラットフォームだったのに対し、新型はルノーと共同開発した「CMF-B」を採用。これは現行「ノート」やルノー「ルーテシア/キャプチャー」と同じで、同クラスの日本車より骨太な感触だ。直進安定性が高く、フラットな乗り心地が特長。筆者は能登半島地震の被災地へカーシェアリングのノートで向かった際、悪路でも疲れずに往復できた経験がある。この強靭なプラットフォームが、力強いデザインのSUVにマッチし、e-POWERやe-4ORCEの性能を引き出す。
価格とまとめ:競争力のある設定
新型キックスは全車ハイブリッドながら、エントリー価格は299.97万円(X シンプルパッケージ)と300万円を切る。モデルチェンジ直前の先代はベースモデルでも300万円超だったため、新開発のハイブリッド、高剛性プラットフォーム、e-4ORCEを搭載し、日本製であることを考慮すれば、頑張った価格設定と言える。デザインが気に入れば「買い」であり、ロングドライブが多い人にはプラットフォームや4WDのアドバンテージが生きるだろう。



