左ハンドル&VCターボ搭載の日産「ムラーノ」に試乗!逆輸入車の実力とは
左ハンドル&VCターボ搭載の日産「ムラーノ」試乗!逆輸入車の実力

日産自動車のエンブレムが付いているのに左ハンドル。しかも、VCターボエンジンで「発電」ではなく「タイヤの駆動」を行う(日本では)異色のクルマ「ムラーノ」に試乗した。いわゆる逆輸入車は日本で乗っても快適なのか。

ムラーノを日本で販売する理由

ムラーノは日産が米国・テネシー州のスマーナにある工場で生産しているミッドサイズのクロスオーバーSUV。洗練されたエクステリアデザインと高い快適性が米国市場で高い評価を得ているという。日本では2026年6月3日から受注を開始した。

日産が米国生産車のムラーノを日本に導入する最大の背景としては、規制緩和がある。国土交通省が新たに創設した「米国製乗用車認定制度」によって、「FMVSS」(米国基準)に適合した車両については、日本国内での安全・環境試験の一部手続きが簡略化され、型式指定が取得できるようになった。これにより、北米生産車を日本向けにするためのコストや手間といった障壁が大幅に下がり、「逆輸入車」が事業として成り立ちやすくなったのだ。

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もうひとつは、日本のSUV市場において、「エクストレイル」の上位を埋めるモデルが現状では不足していること。もう少し待てばフラッグシップSUV「パトロール」の逆輸入が始まるはずだが、その穴をムラーノで埋めたいという意図もある。さらには、「VCターボ」(可変圧縮比エンジン)を搭載するムラーノを日本に導入することで、その技術の高さもアピールすることができるのだ。

サイズはアメリカン! ムラーノの主要スペック

試乗したムラーノはUS仕様そのままの広報車。グレードは最上級の「Platinum」だ。日本への導入モデルは「SV」グレードになるという。ボディサイズは全長4,900mm、全幅1,980mm、全高1,725mm、ホイールベースは2,825mm。最低地上高210mm、車両重量2,013kg(日本向けは1,945kg)だ。

最近では国内向けのクルマも大型化が進んできているが、ムラーノのそばに立つと、その大きさはやっぱりアメリカン。圧倒されるサイズ感だ。

搭載するパワートレインはVCターボ(可変圧縮比)エンジンの「KR20DDET型」。水冷直列4気筒で排気量は1,977cc、最高出力は180kW(245PS)/5,600rpm、最大トルクは352Nm/4,400rpmを発生する。トランスミッションは9速AT。サスペンションは前ストラット、後マルチリンクの四輪駆動だ。タイヤサイズは255/50R21とこちらもビッグで、日本向けは1インチ小さな255/55R20タイヤを装着する。

試乗車(米国仕様)のタイヤはブリヂストン「アレンザ」。フロントのデザインは、最新の日産モデルらしい薄型LEDライトと一体化した「Vモーション」グリル。センタープレートには「MURANO」のロゴが入る。サイドはEVの「アリア」や「リーフ」のような5ドアクーペ風のシルエットにSUVらしい大径タイヤ(日本仕様はクムホ255/55R20オールシーズン)の組み合わせ。リアは左右一文字につながるワイドなLEDライトと同じく幅広の「MURANO」ロゴで、その下側の丸みを帯びた造形部とともに収束する。

インテリアは水平基調のダッシュボードに2本スポークステアリングを組み合わせたスタイルで、こちらも「アリア」などを彷彿とさせる。パネルはデュアル12.3インチのデジタルメーターとタッチ式センタースクリーンの組み合わせ。空調などの手が触れる部分は質感の高い木目調で、その下にQi充電、続くセンターコンソールにボタン式のシフトボタンやドライブモード切り替え、カメラボタンやカップホルダーが配置されている。試乗車のシートはセミアニリンレザーだが、日本仕様は合皮となる。ロングホイールベースをいかした室内の足元空間は前後ともゆったりで、分割可倒のラゲッジスペースもたっぷりだ。

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ドライビングポジションを合わせると(左ハンドルです)、頭上空間に余裕がないのはちょっと意外だったが、パノラミックサンルーフ(日本仕様は非搭載)のおかげで室内が明るいのはいい。

大型ボディ、左ハンドル、VCターボの走りはいかに

筆者は左ハンドル車を1台所有しているが、幅は1,600mm程度なので気楽に乗れる。幅1,980mmのムラーノを運転する際には、さすがに気を使った。4つのカメラを使用する「インビジブルフードビュー」(車体下の視界を表示)や「インテリジェントアラウンドビューモニター」は付いているけれど、日産の地下駐車場から出る際には、あちこちからアラームが鳴り響いてドキドキした。

インストラクションブックはもちろん英語だし、デフォルトのナビやメーター表示は米国仕様のまま。スピードメーターにはkm/hだけでなく、右下に小さくMPH(マイル表示)が表示されたり、バックミラー(試乗車は電子格納式、日本仕様は手動式)に「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」(ミラーに映るよりも、実物はより近くにある)と書かれていたり、給油口がキャップレスだったり、後退時のブザーが鳴らなかったりと、そこここで輸入車らしさが味わえるのが楽しい。

GoogleビルトインでApple CarPlayやAndroid Autoに対応しているので、スマホにつなげてしまえばマップもアシスタントも通常通り使えるし、プロパイロットも問題なく稼働(144km/hまで)する。日本の標識も認識してくれる。

日産が世界で初めて量産化に成功したVCターボエンジンは、圧縮比を8.0の高出力用から14.0の高効率用まで無段階で変更できるという“二刀流”の性能が特徴。ピストンが直立していて滑らかに上下するため、不快なエンジン振動が少なく、ターボラグも少ないので、ムラーノのような大型ボディや4WDシステム搭載車にはぴったりのエンジンだ。

スポーツモードに入れてやると、乾いた4気筒のサウンドを発して大きなボディを気持ちよく加速させてくれるのだが、さすがにボディ重量が約2トンもあるだけに、VCターボといえどもパワー炸裂、という感じではない。どちらかといえば、スピードを一定の高速領域まで持っていき、そのまままっすぐ淡々とハイウェイを走り続けるのが得意そうだ。そんな走りをしていても、メーター上の航続可能距離は700km以上を表示していた。優れた環境・燃費性能を持ち合わせていることがわかる。

幅広ボディなので、日本の狭い道では少し気を使う必要がある。右折時で対向車も右折がある場合は、その陰に隠れて接近してくる直進通過車が見えにくいので、こちらも注意だ。

完全米国生産の日産車を日本に逆輸入することは、「アメリカ・ファースト」「対日貿易赤字の是正」を掲げるトランプ大統領にも好意的に捉えられる事例になるだろう。796.4万円という価格はおいそれと手が出せないが、人と同じクルマに乗りたくないという個性派の日産ファンにとっては、所有欲を満たしてくれる1台となるはずだ。試乗した8月27日の時点で日本での受注台数は118台となっていた。興味がある方はお近くの販売店に問い合わせてみてはいかが。