国内初「麹発酵ビール」実現、埼玉と愛知の企業タッグで開発
国内初「麹発酵ビール」実現、埼玉と愛知の企業タッグで開発

国内初の「麹発酵ビール」を開発し、世界に発信したい―。その熱い思いを埼玉の人気クラフトビールメーカーと愛知の種麹(麹菌)をベースに微生物研究開発を行う老舗企業がタッグを組み、実現にこぎつけた。

両社は、埼玉県が昨年開設したイノベーション創出拠点「渋沢MIX」が設定し、各企業が持つ独自技術などを組み合わせて新たな事業を展開する際に支援金や専門家による伴走支援を受けられるプログラム「Canvas」に採用されたことで出合い、開発を加速させた。このほど、「麹」ビールのテストバッジ(試作品)が完成し、クラウドファンディング(CF)で提供するに至った。

「麹」にさまざまな利点

今回、Canvasプログラムを通じてタッグを組んだのは、「COEDO」ブランドで多様なクラフトビールを提供する協同商事(川越市)と、種麹で国内約50%(自社推計)のシェアを誇るビオック(愛知県豊橋市)。

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「麹を使ったビールができないかという構想は長年あったが実現する術がなかった。(Canvasプログラムで)ビオックの村井三左衛門社長と出会ったことで一気に加速した」協同商事の朝霧重治社長は興奮気味にこう語る。試作品はフルーティーで奥深い味わいに仕上がった。

では、なぜ麹でビールなのか。朝霧氏は、麹は乾燥エネルギーがかからないことや、圧倒的な小スペースでの製造が可能なこと、さらに、製造時間もビールに必要な麦芽製造が最低1週間かかるのに対し麹ならば約4日でできる、といったメリットを挙げた。

国内では大麦栽培が可能なのにも関わらず、「モルティング」と呼ぶ麦芽製造工程を持たないためにサプライチェーン(供給網)が断絶し、国産原料でビールが作りにくい点も指摘。これに関しても、麹菌がデンプンを糖に変える酵素を持つ特徴を生かし、モルティング工程なしに醸造が可能になるという。国内で増え続ける耕作放棄地を活用し大麦を生産するなど「独自のエコシステムを確立したい」考えだ。

「四方よし」の実現へ

もっとも、この1年の商品開発は簡単ではなかった。特に、実験段階から工場での量産化段階に進んだ際に、大量の麹をどう操作するかに関し、試行錯誤が続いたが、両者が具体的に課題を伝え、それに麹の性能を生かした解決策の提案があり、難題もクリアしていったという。

Canvasのサポート体制に関しては、「期限を区切ったプロジェクト管理やプロジェクトマネージャーによる伴走支援もあり、当初予定をはるかに超えるスピードで商品化できた」(朝霧氏)と振り返る。

朝霧氏は、麹ビールプロジェクトを通じ、将来は「麹業界、ビール業界、農業界、顧客の『四方良し』を実現したい。日本初のビアスタイルを世界に発信し、日本人が誇れるものを作りたい」と話すと、村井氏も「次代には麹ビールが社会の中で一定のポジションを確立しているのでは」と夢の未来を描く。

麹ビールのクラウドファンディングは応援購入サービス「マクアケ」で2027年1月12日まで行い、応援者の声を聞きながら、風味の調整も行う方針で、「日本人が『うまい』と話すビールとして世界に発信できる」(朝霧氏)と力を込めた。

渋沢MIXとCanvasプログラム

渋沢MIXは、オープンイノベーションの創出・促進、スタートアップの創出・成長支援、イノベーションを担う人材の育成を目的とした施設で、昨年7月、JRさいたま新都心駅直結のビルに開設。会員数は1000を数え、250を超えるイベント開催、多くのマッチングなどを実現している。

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Canvasは、県内企業の成長を支援するため、県内企業と全国の企業をマッチングし、新規事業創出や企業の課題解決に向けた支援を行うプログラム。2者以上で組成された共創プロジェクトが採択されると最大500万円の支援金のほかコンサルティングなど伴走支援を受けられる。