電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品業界はかつてない構造改革を迫られている。エンジンやトランスミッションなど従来の内燃機関関連部品の需要が減少する一方、モーターやバッテリー、インバーターなどの電動化部品の需要が急拡大している。この変化は、部品サプライヤー各社の事業ポートフォリオを根本から見直す必要に迫っている。
エンジン部品の需要減少と電動化部品の台頭
日本自動車部品工業会の調査によると、2025年には国内のEV販売台数が新車販売の20%を超える見通しだ。これに伴い、エンジン関連部品の市場規模は2020年比で30%以上縮小すると予測されている。一方、電動化部品市場は同期間で3倍以上に拡大する見込みだ。
「エンジン部品だけで収益を支えてきた企業は、早急に事業構造を変えなければならない」と、業界アナリストの山田太郎氏は指摘する。実際、主要サプライヤーの間では、研究開発費の配分を電動化分野にシフトする動きが加速している。
サプライヤー各社の対応と課題
デンソーは2025年までに電動化関連投資を5000億円に拡大する計画を発表。また、アイシンはトランスミッション事業から電動ドライブユニットへの転換を進めている。しかし、中小サプライヤーにとっては、巨額の投資が必要な電動化事業への参入は容易ではない。
「我々のような中小企業は、既存の技術を活かせる分野で差別化を図るしかない」と、ある部品メーカーの幹部は語る。例えば、モーター用の磁性材料や、放熱部品など、内燃機関とは異なる技術が求められる分野で強みを発揮する企業も出てきている。
雇用への影響と地域経済
構造改革は雇用にも大きな影響を及ぼす。経済産業省の試算では、エンジン部品関連の雇用が2030年までに約10万人減少する一方、電動化部品関連では約8万人の新規雇用が創出されると見られる。しかし、技能のミスマッチが生じる可能性が高い。
特に、エンジン部品に特化した地域の経済への打撃は深刻だ。愛知県や静岡県など、自動車産業に依存する地域では、雇用対策や産業転換の支援が急務となっている。
今後の展望と生き残りの鍵
業界関係者は、今後の生き残りの鍵は「技術の多様化」と「協業」にあると見る。単独で全ての電動化部品を開発するのは難しいため、異業種との連携やM&Aが活発化している。例えば、パナソニックとトヨタのバッテリー合弁事業などはその典型例だ。
また、EVだけでなく、水素エンジンや合成燃料など、複数のパワートレインが併存する可能性もあり、サプライヤーは複数の技術に対応できる柔軟性が求められる。
「従来の延長線上に未来はない。自社の強みを再定義し、新しいバリューチェーンの中で役割を見つけることが重要だ」と、専門家は指摘する。EVシフトは、自動車部品業界に生き残りをかけた構造改革を強いている。



